目と健康シリーズ No.1

Eye & Health
  

特集:目で見る眼の仕組みと病気


監修・編集
東京女子医科大学眼科教授
堀 貞夫 先生

 

も く じ
・ものが見える仕組み
・眼のつくり
  1.外 膜
  2.中 膜
  3.内 膜
  4.その他の部分の構造
・主な眼の病気
  1.屈折異常
  2.白内障
  3.緑内障
  4.眼底の病気

 ハ〜イ、みんな元気! あれ、どうしたの? なんだかうかない顔して、どこか具合でも悪いの? あっ、ごめんネ。自己紹介もしないで急に話しかけちゃって。あたしの名前はアイ。みんなには「アイちゃん」って呼ばれているの。よろしくね!
 実はネ、今とっても興味をもっていることがあるの。なんだと思う?それはネ、人の目なの。目って、とっても神秘的でしょ。黒い目、青い目、やさしい目、こわ〜い目。同じ人間の目なのに、どうしてこんなに違うんだろう? 目でものが見える仕組みも知りたいし…。それで今日は、目のお勉強をしようと思うの。あなたも一緒にどうぉ?
 それじゃ早速、目の中を覗いてみョ!

 眼球は奥行き約 24ミリメートル、重量約7グラムのごく小さな感覚器です。しかし、人間がからだの外から受ける情報の約80パーセントが、このふたつの、ガラス玉のように透き通った瞳から入ってくるといわれています。眼は小さくてもとても大切な、情報の窓口なのです。

ものが見える仕組み

 眼でものを見る仕組みは、カメラにたとえることでわかりやすく理解できます。カメラの構造を単純にいうと、シャッターボタンを押した瞬間に光がレンズを通り、それがフィルムに像として焼き付けられる、ということになります。
 眼も同様で、瞳から入った光が、水晶体〈すいしょうたい〉(カメラのレンズに該当します)を通ったときに屈折して、網膜〈もうまく〉(フィルムに該当)で像を結びます。今この文字を読んでいるあなたの眼も、やはり同じように、光を網膜で感じとって認識しているのです。
 実際の写真撮影では、シャッターボタンを押すまでに、ピントを合わせたり、絞りやフィルム感度の設定を行いますが、眼にも同じような役割を果たす部分があります。もう少し詳しく、眼の仕組みを見てみましょう。
 眼に入った光が一番最初に通過するのは、角膜〈かくまく〉という透明な膜です。カメラにたとえるなら、レンズの前のフィルターのようなものです。角膜の手前で眼を守っているまぶた(眼瞼)は、レンズキャップといえるでしょう。
 角膜の奥には、虹彩〈こうさい〉という組織があります。これはカメラの絞りに該当し、眼の奥に入る光の量を調節しています。虹彩の中央部に瞳孔〈どうこう〉があって、瞳孔は明るい所では小さくなり、暗い所では大きくなります。
 瞳孔を通過した光は、水晶体で屈折します。水晶体は厚さ約5ミリメートルの透明の組織で、毛様体〈もうようたい〉から出る細い糸(チン小帯〈しょうたい〉)によって固定されています。毛様体の筋肉の伸び縮みによって、水晶体の厚みが調節され、ピントが合わせられます。遠い物を見るときは水晶体が薄くなり、近い物を見るときは厚くなって、常に網膜の位置でピントが合うのです。
 水晶体の後ろは硝子体〈しょうしたい〉という、眼球の大部分を占める透明な組織です。眼のかたちを内側から支える役割を果たしています。カメラでは、レンズとフィルムの間の空間にあたります。水晶体で屈折した光が網膜で像を結ぶためには、一定の距離が必要ですが、それはこの硝子体によって作り出されています。
 そして網膜はフィルムにあたり、光の明るさや色合いを感じとる視細胞〈しさいぼう〉が密集しています。ここに到達した光の情報は、視神経を通り、脳の中の視覚野〈しかくや〉という、フィルムの現像プリント工場にあたる部分に送られて、ようやく映像となります。

眼のつくり

 それでは次に、眼球の各部分の構造を見てみましょう。

1.外 膜

強 膜〈きょうまく〉
 眼球の一番外側は線維質の丈夫な膜で覆われています。これは強膜という、眼球を保護するための、いわば外壁のようなものです。血管が少なく、色は白で、いわゆる白目にあたります。強膜は、外膜全体の約6分の5にあたり、角膜〈かくまく〉以外の眼球の後方を覆っています。
 なお、強膜は眼球の前方で、まぶたの裏側とつながっていますが、そのつなげる役割を果たしているのが結膜〈けつまく〉です(結膜は専門的には外膜ではなく、眼球周囲の付属器にあたります)。
角 膜〈かくまく〉
 外膜の残りの6分の1は角膜です。角膜は血管のない透明の膜で、厚さは中央部で約0.5ミリメートルです。透明なため、目を正面から覗くと、角膜の下の組織が透けて見えます。つまり、黒目にあたる部分が角膜に覆われている部分ということです。

2.中 膜

脈絡膜〈みゃくらくまく〉
 強膜の内側に密着している、細い血管が密集した組織です。この脈絡膜を通して、網膜の細胞へ栄養が送られていきます。
毛様体〈もうようたい〉
 眼球の前方で、脈絡膜と虹彩につながっています。また、毛様体から出る細い糸(チン小帯)が、水晶体を輪のように取り巻いていて、伸縮により水晶体の厚さを調節します。
虹 彩〈こうさい〉
 毛様体の手前にある、ドーナツのように輪になっている組織です。虹彩の中心が瞳孔で、虹彩は瞳孔を拡げたり縮めたりして、通過する光の量を調節しています。

 脈絡膜、毛様体、虹彩の三つは、まとめてぶどう膜と呼ばれています。

3.内 膜

網 膜〈もうまく〉
 網膜は脈絡膜の内側にあって、1億数千万個の細胞が、0.2〜0.5ミリメートルの薄い膜を作っています。明暗や色を感じとり、ものを見るために最も大事な部分です。とても柔らかく剥がれやすい膜です。
 なお、眼を正面から覗いたときに見える眼球の奥、主に網膜のことを眼底〈がんてい〉といいます。眼は光を感知する感覚器官ですから、当然、中のほうまで覗けるわけです。
1)黄 斑〈おうはん〉
 眼底の中央部分を黄斑といい、ここには視細胞のうちの錐体〈すいたい〉細胞が集中しています。
2)中心窩〈ちゅうしんか〉
 黄斑の中心にあたる中心窩は、網膜がとくに薄くなっていて、血管もなく、最も視覚が鋭敏な一点です。
3)視神経乳頭〈ししんけいにゅうとう〉
 黄斑よりも少し内側(鼻側)の眼底にあり、網膜上の視細胞につながっている神経線維が、集まっているところです。網膜で受けた光の情報は、ここから脳へ送られ映像となります。
 また、視神経乳頭は、網膜内の血管の集合点でもあり、ここから網膜全体へ、網膜動脈、網膜静脈が広がっています。

4.その他の部分の構造

 以上のほか眼球には、「ものが見える仕組み」のところで解説したとおり、水晶体、硝子体があり、角膜から網膜への光の通り道を作っています。なお、水晶体と角膜の間の空間は、房水〈ぼうすい〉という涙のような液体で満たされています。房水は、血管のない角膜や水晶体、硝子体の栄養を補給しています。
 また、眼球の周りの組織としては、眼球を動かすための眼筋〈がんきん〉という筋肉、涙を出す涙腺〈るいせん〉などがあります。

主な眼の病気




屈折異常
 それではここで、主な眼の病気について、簡単にふれておきましょう。

1.屈折異常

 近視や遠視、乱視などのことです。水晶体の厚さの調節が適切にできないことや、角膜から眼底までの距離(眼軸〈がんじく〉)が長すぎたり短すぎたりすることから、ピンぼけの写真のように見えてしまう状態です。眼底より手前で焦点が結ばれてしまうのが近視、眼底の後ろに焦点がきてしまうのが遠視です。
 乱視も屈折異常ですが、水晶体のほかに、角膜の表面にゆがみができることなどから、屈折の度合いにばらつきが出る状態で、これは屈折異常です。
 屈折異常があっても、メガネやコンタクトレンズを利用し、眼底の位置に焦点がくるように調節すれば、ものがはっきり見えるようになります。
 老眼は、加齢により水晶体の弾力性や毛様体の働きが悪くなり、近いものが見にくくなった状態で、これは調節異常です。

2.白内障

白内障
 水晶体が濁って視力が低下する病気です。水晶体はカメラのレンズにあたる無色透明の組織で、水晶体上皮という細長い細胞で構成されています。この細胞の新陳代謝が、加齢などの理由で変化してくると、本来透明であるはずのものに濁りが生じてくるのです。糖尿病やアトピー性皮膚炎など、眼以外の病気が原因で、白内障になることもあります。
 治療には、水晶体の成分構成を整える薬による薬物治療もありますが、進行を防止するのが目的であり、より確実な効果が得られるのは手術による治療です。
 手術は、濁った水晶体を取り除くことが目的です。しかし、水晶体を取り除いただけでは、カメラのレンズがない状態と同じで、ピンボケのようにしか見えません。そこで、メガネやコンタクトレンズで矯正したり、水晶体があった位置に眼内レンズを埋め込んだりします。現在ではほとんどの場合、眼内レンズを移植しています。
 なお、白内障では一般に、視力は緩やかに低下しますので、白内障がみつかったらすぐに手術をするというより、どの時点で手術を行うのが一番よいかを、患者さんそれぞれの日常生活状況などをもとに判断します。

3.緑内障

 
正常な房水の流れ
(正常眼圧)
 房水の流出が阻害さ
れた状態(高眼圧)
緑内障
 眼球の後方にあり、網膜で感じとった光の情報を脳へ送っている視神経が、眼圧〈がんあつ〉が高くなること(高眼圧)によって冒され、視野〈しや〉が狭くなったり、視力が低下したり、場合によって失明することもある病気です。
 眼圧とは、角膜と水晶体の間を満たしている房水が、眼球自体を内側から支えている圧力のことです。房水は毛様体で作られ、角膜と強膜の境目の隅角〈ぐうかく〉にある線維柱帯〈せんいちゅうたい〉で吸収され、シュレム管〈かん〉で排出されます。房水は、この一連の流れの途中で、角膜や水晶体、硝子体に栄養を与えています。
 隅角や線維柱帯に異常があると、房水の量が多すぎて高眼圧になります。緑内障は、高眼圧を起こしている原因によって、いくつかのタイプに分類されていますが、中には急激に痛みが起きて、早急に処置しなければならないケースもあります。
 治療は眼圧を下げることが基本です。薬により房水の量を抑えたり、手術で房水の出口にバイパスを設けたりします。
 なお、眼圧は正常なのに視神経が冒される、正常眼圧緑内障という病気もあります。


4.眼底の病気

 眼底の病気は、血管障害、血流障害が関係していることが多いのが特徴です。眼底を構成している網膜、脈絡膜は血管に富んだ膜で、その血管に障害が起きると、さまざまな悪影響が現れます。
 例えば、眼底の血管が破れて起こる眼底出血。出血した血液が眼球内に広がると、視野が欠けたり、視力の低下、出血の場所によっては即、失明に至ることもあります。
 また、血管が詰まって血液が流れにくくなり、網膜の細胞の機能が停止してしまい、視力低下、視野が欠ける、などが起きることもあります。網膜が眼球壁から剥がれてしまう網膜剥離〈はくり〉なども、比較的頻度の高い病気といえます。

 これらのほかに、眼の病気には、色の区別がつかない色覚〈しきかく〉異常や、角膜の表面が乾燥するドライアイ、強膜・視神経の病気など、いくつもの種類があります。
 患者さんがまず理解しておかなければいけないことは、病気によって一度失われた視力は、回復が難しいことが少なくないということです。少しでも気にかかることがあれば、早目に眼科を訪れ、もし検査で異常を指摘されたら、視力障害が今以上進行しないように、適切な治療を継続していくようにしましょう。
 人間のからだの中のほんの小さな一部分ですが、とても大きな役割をもっている眼を、ずっと大切にしてあげてください。

 へェー、精密器械のような目にも、いろいろな故障が起きてくるのねェ。精密にできているから余計に故障しやすいのかもしれないな…。なんだが目について、もっと詳しく知りたくなっちゃった。
 今日はアイの勉強に付き合ってくれて、ありがとう! またどこかで会えるといいネ!!

シリーズ監修:堀 貞夫 先生 (東京女子医科大学眼科教授)
企画・制作:(株)創新社 後援:(株)三和化学研究所
1998年4月発行