小児のリウマチ

監  修
大阪大学医学部
整形外科教授

越智隆弘先生

東京大学医学部
アレルギーリウマチ内科教授

山本一彦先生

編  集
杏林大学名誉教授
渡辺言夫先生





小児のリウマチとは?

 小児でリウマチというと1960年ごろまではリウマチ熱のことでしたが、現在では若 年性関節リウマチを指しています。
 リウマチ熱は今ではまれな病気になりましたが、これは溶血性連鎖球菌という細菌 の感染を繰り返し受けていると発病します。
 高熱・関節炎・心臓の炎症・発疹などがみられますが、心臓の弁膜がおかされて心 臓弁膜症として残ることがあります。
 そもそも「リウマチ」とはヒポクラテスの時代に、脳から粘液が身体各所に流れて 病気になると考え、「流れ」が「ロイマ」で、131 年にガレンが関節炎をリウマチと 呼んだのです。



若年性関節リウマチの病 型

 若年性関節リウマチは小児のリウマチ性疾患の中でもっとも多く、また、慢性の難 病で子ども達を悩まします。英語でj u v e n i l e rheumatoid arthritisといいま すので頭文字をとって“JRA”といい、小児期に発病する慢性関節リウマチ(RA)で す。小児期とは15歳までをいいますが、病名についての年齢を厳密に区別することは できません。
 なぜ「若年性」とつけるのでしょうか。それは小児に発病した場合には成人の慢性 関節リウマチと異なって多彩な症状を示すことがあるからです。そのため発病のしか たから次の3 つに分類されます。

■全身発症型(急性発症型、スチル病)
 1日のうちで上下の変動の激しい発熱のほか、発疹、脾臓の腫脹、リンパ腺の腫大 、関節炎がみられます。発疹はリウマトイド疹とも呼ばれ、鮮やかなピンク色で直径 数mmの円形または不整形で、皮膚からほとんど盛り上がらず、痛みやかゆみはありま せん。この発疹は出たり消えたりしながら何日も続きます。短い場合は1〜2日のこと もあり、長い場合は数ヵ月間も繰り返されることもあります。発疹は関節炎が起こる 前からみられることが多いので、診断には重要な症状とされています。関節炎は早く からみられることがありますが、ある期間まったく認められないことが多いので、若 年性関節リウマチと診断できないことがあります。6ヵ月くらいたっても関節炎がな いものは若年性関節リウマチ以外の病気と考えます。急性発症型の若年性関節リウマ チを報告者の名をとってスチル病といいます。

■多関節型(成人型)
 成人の慢性関節リウマチと同様に、多くの関節が腫れて痛みます。スチル病のよう に激しい発熱や発疹は認められませんが、関節症状は重く、破壊が起こりやすく、身 体障害を残しやすいです。

■少関節型
 おかされる関節は多関節型よりも少なく4関節以下と定義されています。また、虹 彩炎が高率にみられることと、血液検査で抗核抗体という特殊な抗体がみられます。 この病型のものが若年性関節リウマチと同一疾患か否か意見が分かれています。
 虹彩というのは目の瞳孔の周囲の組織で、光が当たると瞳孔を縮小させますが、こ こに炎症が起こるのが虹彩炎で、少関節型に多くみられますが他の病型にも認められ ます。視力の低下や左右の瞳孔の大きさが異なることなどから気づかれることが多く 、炎症があるほうの瞳孔は健常側より小さく、光で縮小する反応も鈍くなっています 。早く治療しないと失明する危険がありますので若年性関節潟Eマチでは定期的な眼 科検診が重要です。



若年性関節リウマチの症 状

■激しい発熱
 約半数に発熱がみられますが、全身発症型ではほとんどの患児に発熱があり、しか も1日のうちに36℃から39℃以上の上下の激しい熱が特徴です。多関節型や少関節型 では発熱があってもこのような高熱ではありません。

■発疹
 鮮やかなピンク色の小さい発疹です。全身発症型の70%くらいに認められますが、 他の型ではほとんどみられません。

■激しい朝のこわばり
 睡眠や安静によって長時間関節を運動させないと「こわばり」を感じ関節運動が困 難になります。この症状は特に朝に多いので「朝のこわばり」と呼ばれています。成 人の慢性関節リウマチにも認められますが、小児ではそれが著しいのです。年齢の大 きい小児ではこわばりを訴えることができますが、低年齢の場合ははっきり訴えるこ とができません。朝目が覚めたときから不機嫌で、布団から起き上がらず、起こして も肘や膝を曲げており、首を回すこともできず、振り向くときは肩や上体と一緒に回 します。また、顎(あご)の関節にこわばりがあると、口を開くことが困難となります 。これらの症状は昼に向かって次第に軽くなり、関節の動きはよくなります。「朝の こわばり」の持続時間は病気の活動性の程度を表わしていますので、リウマチが軽く なるとこわばっている時間は短くなります。



成人と小児で異なる点

■使用できる薬が限られる
 多くの非ステロイド性抗炎症薬や抗リウマチ薬がありますが(リウマチセミナー3 、4参照)、小児に使用できるものは少なく、それがリウマチの活動性を抑えるのが 困難である1つの原因になっています。

■成長が障害される
 成人と小児の大きな違いは小児は成長の過程にあるということです。そのため小児 に慢性の病気が起こると成長が障害されます。
 若年性関節リウマチは関節局所だけではなく全身性の炎症ですので、いろいろな成 長障害が起こります。
 まず身長ですが、リウマチの活動性が続いている期間と身長の関係をみますと、期 間が長いほど身長は標準と比べて低くなっています。ステロイド(副腎皮質ホルモン )は身長の伸びを抑えますから、ステロイドを使用すると低身長の傾向はますます著 しくなります。
 関節運動が十分にできないと、関係している骨の成長が障害されます。顎(あご)の 関節炎のために口の開閉やかむことが困難になり、下顎の成長が遅れて小顎症になり ますし、膝関節炎の左右差があると下肢の骨の長さも違ってきます。成人にはみられ ない特徴です。

■運動療法やリハビリテーションがむずかしい
 関節の変形や機能障害を最小限に抑えるためには、薬物療法のほかに運動療法やリ ハビリテーションの手技を加えた治療も重要です。しかし、小児、特に学齢期前では 、遊びの中に組み込んで楽しくできる方策をたてなければなりません。痛みを伴うと まったく協力してくれません。
 お風呂から出たときは痛みやこわばりが軽くなっているのでチャンスです。たとえ ば指の運動ならば一緒に「むすんでひらいて」をしたり、ボールを握ってつぶしたり します。ボールの大きさ、堅さにはいろいろなものがありますし、ボールに絵を描い ておくのもよいでしょう。首を上に向ける運動なら高いところにキティちゃんやどら えもんなど好きな絵を貼ったりして上を向かせるようにします。肩関節を動かすには 「おててぐるぐるまわし」、顎関節は「眠い眠いの大あくび」です。動かしたい関節 によって工夫をして、一緒にします。

■十分な学校生活の配慮が必要
 関節の運動と安静を適度に組み合わせることは登校できるようになってからも重要 です。重症な全身症状や下肢の関節の痛みがなければなるべく早く登校したほうがよ いのですが、登校の方法、学校での生活、登下校時刻、帰宅後の安静度などについて は担当の医師に相談してください。




経  過

 1996年に行われた日本小児リウマチ研究会の調査の結果では、多関節型で発症した ものは他の病型よりも関節症状は重く、また、全身発症型で発病6 ヵ月以内に多関節 型になったものは関節の変形や破壊が早く出現するという結果が示されました。
 若年性関節リウマチの病勢は思春期に増悪するといわれていますが、10年間の観察 では明らかな関係はないと考えられました。ある統計によると病気の活動期が1回だ けでその後次第に寛解して治癒に向かうという幸運な型が数パーセントあり、そのう ちの半数は発病6 ヵ月以内に完全寛解します。また、一方では病勢の強弱はあります がほとんど寛解することがないものもあって、経過は個々に異なります。経過ととも に骨の破壊や関節の変形が進行するので、これを最小に抑えることが重要な課題なの です。そのためには早くからリハビリテーションの手技を応用した治療・管理が必要 です。




若年性関節リウマチと似 ていて
異なる病気

■マクロファージ活性化症候群
 白血球のうちマクロファージと呼ばれる血球があります。「たくさんなんでも食べ る」という意味で、これが侵入した細菌などを食べてからだを守ってくれるのですが 、その反応が激しすぎると赤血球を食べてしまったり、かえって不都合なことが起こ ります。高熱や発疹、関節炎など若年性関節リウマチと似た症状がでます。

■若年性強直性脊椎炎
 下肢の関節が侵されることが多く、若年性関節リウマチの少関節型とよく似た症状 を示しますが、腰椎や胸椎の痛み、踵や膝や足背の筋肉と腱が付着しているところの 痛みが特徴的です。
 脊椎の炎症のために腰を曲げることが困難になったり、股関節の動きがわるくなる などの症状が現れますが、数年たってからのことが多いです。




お母さま方へ

 日常生活のおくり方は、障害のある関節やその程度によっていろいろです。たとえ ば、指や手関節がわるい子どもは鉄棒などはできませんが下肢の関節がよければ走っ てもよいのです。洋式トイレでなら用便ができるのに洋式がない学校では困ります。 また、階段の昇降がむずかしい子どもでは授業で階段を使って教室を移動することが あるかどうかも確かめておきます。学校ではみんなが助け合いの気持ちで先生や友だ ちが介助してくれますが、子どもによってはそれがいやで学校にいかないことがあり ます。ですから、それぞれの子どもの身体的、精神的な問題を考えなければなりませ ん。若年性関節リウマチの学校生活指針では社会科見学、遠足、運動会、給食当番な ど参加してよいか、条件付き参加か、禁止か、が示され、体育の指針では指導要綱に ある全種目について指示できるようになっており、多くの病院にその用紙があって、 学校に提出することができます。



ほっと・たいむ
   あすなろ会(小児リウマチ親の会)


 リウマチの患者さんの会として「リウマチ友の会」があって広く活動をしています が、リウマチの子どもをもつ親の方々の会が「あすなろ会」です。小児リウマチは2 〜3 歳と10 歳前後に発病のピークがありますので、幼児の患者さんも多いのです。 毎日高熱があり、関節を痛がる子どもをみていますと親は不安・焦燥の毎日です。そ こで私たちは1985年から夏休みを利用して全国小児リウマチサマーキャンプを始めま した。2 泊3 日で、朝のリウマチ体操に始まり専門医の診察、個別医療相談、家庭で のリハビリテーション実技指導、教育相談、教育講演、父母の会などを行いました。 この父母の会が現在の「あすなろ会」に発展したのです。会では春と秋に親だけの会 をもち、病気の子どもをもつ親でなければわからない気持を思いきり話し会う機会が 作られています。夏は発足時のサマーキャンプに準じた集まりで子どもと参加し医療 相談・個別指導・教育講演などが計画されています。患者さん自身の体験談やアドバ イスは意義深く大変示唆に富み、慢性の病気を克服する力が湧き希望を与えてくれま す。

あすなろ会
〒 214−0037 神奈川県川崎市多摩区西生田
       5−3−4 山口 方
       Tel・Fax 044−953−2747
http://www1.ocn.ne.jp/~ asunaro/