リウマチの合併症

監修
大阪大学医学部教授・国立相模原病院
院長

越智隆弘先生
東京大学医学部
アレルギーリウマチ内科教授

山本一彦先生
編集
近藤リウマチ・整形外科クリニック
院長

近藤正一先生







 リウマチという病名は、正確には「関節リウマチ」といいます。病名に関節がついているようにリウマチの主な病状は関節症状、つまり関節の腫れや痛みといった関節炎の症状です。しかし、リウマチは全身の炎症性疾患でもあるため、ひどくなると関節だけでなく、関節以外にも症状が出ることがあります(関節外症状といいます)。また、リウマチにかかっている年数が長くなってくるといろいろな合併症を起こすことがあります。
 さらに、抗リウマチ薬、非ステロイド性抗炎症薬、ステロイド薬などのリウマチの薬による副作用も合併症の原因となります。
 これらのリウマチの合併症を原因別にまとめたのが上の表です。また合併症の起こる部位別にわかりやすく示したのが上の図です。



全身症状の合併

 発熱、倦怠感、体重減少などがあります。リウマチの炎症がひどくなると出てきます。発熱は38℃以下の微熱程度で、倦怠感も伴います。このような状態が長期間続くと、体力を消耗して体重も減ってきます。この場合は薬でリウマチの炎症をより抑えることが必要ですが、全身症状が出たときはなるべく体力を温存して、日常生活は無理をせず、安静を心がけてください。



血液の合併症

 血液の成分である赤血球、白血球、血小板はリウマチの炎症やリウマチの薬の副作用などでその数がよく変動しますので、定期的に検査を受けてください。
■貧 血
 リウマチの関節外症状として多くの患者さんに貧血がみられます。リウマチの炎症が強くなると血液中の鉄分がリンパ球系に取り込まれて減少したり、骨髄での赤血球を造る能力が低下したりするためです。貧血の程度が軽く、かつ長期間持続している患者さんでは、からだが貧血に慣れてしまって症状が出ませんが、急に進行すると動悸や倦怠感などが出現します。
■白血球の増加または減少
 リウマチは炎症ですので、白血球は増加しています。またステロイド薬を内服中の患者さんも白血球は増加します。しかし、急に白血球が増加した場合は肺炎や尿路感染などの感染症が合併していることがありますので、検査が必要です。
 逆に白血球が正常値より減少してきた場合は抗リウマチ薬の副作用による骨髄機能抑制(骨髄で白血球を造る能力が低下)や、他の膠原病(シェーグレン症候群など)の合併も考えて、詳しい検査が必要となります。




肺の合併症

 肺はリウマチでもっとも合併症が起きやすい臓器の1つです。肺病変の原因として感染症、リウマチ、薬剤の副作用などがあります。
■感染症による肺炎、気管支炎
 リウマチ患者さんはリウマチによる免疫の異常やステロイド薬などの長期内服により、細菌やウイルスの感染に対する抵抗力が低下する傾向があります。また、体力も低下している場合があり、肺炎や気管支炎などの感染症にかかりやすくなっています。対策としては日頃から手洗い、うがいの励行、人混みを避け、必要に応じてマスクを使用するなどの感染予防が勧められます。
■リウマチによる肺病変
 リウマチの炎症がひどくなると肺にも炎症を起こしてきます。間質性肺炎の初期症状は鼻水や痰を伴わない空咳です。進行すると動作時の息切れなど血液中の酸素が不足してきます。胸のレントゲン撮影で肺に粒状や網の目状の細い影がみられます。炎症が続くと線維状の影となり肺線維症になります。
 胸膜炎は肺の表面の胸膜に炎症を起こして、肺に水がたまった状態です。軽度では無症状ですが、ひどくなると胸痛や呼吸困難になることがあります。これら肺の合併症は無症状に進行することもありますので、年に1回くらいは胸のレントゲン検査が勧められます。
 なお、タバコはこれら肺合併症を起こしやすい原因の1つと考えられていますので、なるべく禁煙を心がけてください。
■抗リウマチ薬による肺炎
 抗リウマチ薬、とくに注射金剤やメトトレキサートなどでは副作用として間質性肺炎を合併することがまれにあります。薬剤性の間質性肺炎は急激に発症することがあり、激しい咳と発熱、呼吸困難を伴います。しかし、なかにはゆっくりと発症する例もあります。痰や鼻水を伴わない空咳が続く場合は、まず抗リウマチ薬を中止して、すぐ診察を受けてください。



皮膚の合併症

 リウマチの病歴が長くなった場合や、ステロイド薬などの副作用で、皮膚が萎縮して薄くなる場合があります。とくに皮下の毛細血管が弱くなって軽い打撲でも皮下出血を起こします。皮膚を強くこすったり傷つけないように注意してください。
 また、リウマチ患者さんは膝や足がわるくて、いつも椅子の生活で床に座らないため、足を下げている時間が長くなり、足がうっ血ぎみになる人がいます。下腿や足がむくむときは昼間1時間くらいはベッドやソファで足をあげて、むくみをとることも必要です。



眼の合併症

 眼の合併症にはシェーグレン症候群の合併による乾燥性病変、リウマチの炎症による上強膜炎、ステロイド薬による白内障があります。
■シェーグレン症候群による乾燥性眼病変
 シェーグレン症候群は涙腺や唾液腺の炎症を起こす自己免疫疾患で、涙が出にくくなったり唾液の量が減少してきます。シェーグレン症候群はリウマチの20%くらいに合併してきます。眼の症状は涙の減少による乾燥性角膜炎で、眼がコロコロする(ドライアイ)とか角膜に傷がついて炎症を起こします。治療は点眼薬を頻回に点眼します。
■上強膜炎
 上強膜炎では眼の白眼の部分に毛細血管のすけるピンク色の少し盛り上がりがみえます。痛みなどの症状はあまりなく、眼の違和感くらいですが、ひどくなるとまれに角膜の潰瘍や視力障害を起こすことがあります。
■白内障
 白内障は老人に多い病気で眼球のレンズ体が白濁して視力が低下しますが、ステロイド薬による副作用でも白内障が起こる場合があります。ステロイド性白内障も治療は一般の白内障と同じです。基本的にはステロイド薬の投与量を減らしたり、中止がよいのですが、このような患者さんはリウマチ治療にステロイド薬が欠かせない場合が多く、白内障の進行がゆっくりであることを考えるとなかなかステロイド薬の中止は困難です。



胃の合併症

 リウマチにおける胃病変は大部分がリウマチの薬、とくに非ステロイド性抗炎症薬の副作用によるものです。多くは胃炎、胃のびらんですが、非ステロイド性抗炎症薬を内服中の10%以上の患者さんに胃潰瘍が合併しているとの報告もあります。とくにステロイド薬を併用している患者さんは胃潰瘍が起きやすい傾向にあります。胃潰瘍の症状は半数近くが無症状ですので、胃からの出血症状の可能性がある貧血の進行や、便が黒くなるなどの場合は胃カメラなどの検査が必要です。



口腔の合併症

 口の中の病変としては、シェーグレン症候群による、唾液量の低下、抗リウマチ薬による口内炎などがあります。
■シェーグレン症候群による唾液腺機能低下
 眼の涙腺機能低下と同じで、シェーグレン症候群による炎症で唾液腺の機能が低下して、唾液の量が減ります。初期はせんべいなどの乾燥したものが食べにくい、会話で舌が口腔にくっついてペチャペチャ音がするなどの症状ですが、注意しないと虫歯が増加したりします。水分の摂取を心がけること、唾液の量を増やす薬剤や人工唾液も使用されています。
■口内炎
 口内炎や舌炎が抗リウマチ薬などの副作用で起こることがあります。ひどくなると原因となる薬剤の中止となります。
 治療は食後の歯みがき、うがいの励行、ビタミンB2、B6の摂取、ステロイド薬の塗布です。



骨の合併症

 合併症として骨量が減少してくる骨粗鬆症があります。原因としては加齢による骨量減少、リウマチによる関節障害で骨、関節への運動量が減る(廃用性骨粗鬆症)、ステロイド薬によるカルシウム吸収障害(薬剤性骨粗鬆症)、女性ホルモンの減少(更年期骨粗鬆症)などが加わるためです。骨粗鬆症の症状は軽度では無症状ですが、高度となると転倒時の骨折だけでなく、日常生活の動作でも脊椎や骨盤の骨折(疲労骨折)を起こすこともあります。
 骨量は一度減少すると増加させることはむずかしいので、骨粗鬆症は予防が大切です。まず、定期的にレントゲン検査や骨塩量を測定して骨粗鬆症になっていないかを検査することが必要です。ステロイド薬内服中の患者さんは予防的に活性型ビタミンD製剤やカルシウム薬の内服を併用しておくこともよいでしょう。日常生活でもカルシウム分の多い食事をとり、可能であれば適度の運動と日光浴も心がけることです。骨量が減少した場合リウマチの治療と平行して骨粗鬆症の薬物治療を開始する必要があります。



腎の合併症

 リウマチ自体による腎病変は少なく、腎障害の多くは抗リウマチ薬の副作用です。
 腎障害の初期症状は持続する尿たんぱくの出現です。とくに抗リウマチ薬による副作用で多く出現します。尿たんぱくは早期に発見して原因の薬剤を中止すれぱ消失しますので、定期的な検尿が大切となります。
 また、まれにネフローゼ症候群、二次性アミロイド症という合併症もあり、定期的な検査が必要です。



血管の合併症

 リウマチの炎症が大変強い患者さんではまれに血管にも炎症が及ぶことがあります。この血管炎は指先などの血管が炎症でつまってしまう指趾壊疸からやや大きい動脈がつまってできる皮膚潰瘍があります。初期に手指の毛細血管がつまって爪周囲の皮膚に黒い小さな斑点(皮膚梗塞)ができることがありますから注意してください。



ほっと・たいむ
   リウマチ症状の変動


 リウマチはたびたび症状がよくなったり、わるくなったりします。これについては診察時に薬の効果や投与量が話の中心になりますが、他の原因でもリウマチ症状は変動します。
季節とリウマチ
 リウマチには寒さや湿気がよくないといわれています。そうなると梅雨や冬にリウマチがわるくなるようですが、必ずしもそうではありません。むしろ、木の芽だち(3、4月)や枯れ草どき(9、10月)の季節の変わり目のほうが、暖かかったり寒かったりの繰り返しで体調を崩したりリウマチがわるくなる患者さんが多いようです。この時期は外気温に合わせてこまめに室温を調節したり、服装に注意してください。
お天気とリウマチ
 リウマチ患者さんはよく、雨が降る前に関節の痛みがひどくなるといわれます。この理由として、低気圧が近づくと気圧が下がってきて関節のむくみが増したり、自律神経系へのストレスがかかるためではと推測されていますが,よくわかっていません。いずれにしても、お天気が安定すれば症状ももとに戻るようです。
日常生活とリウマチ
 日常生活のいろいろの出来事でリウマチがわるくなったり、よくなったりします。わるくなるきっかけとしては、家族の病気介護、娘の出産介助、婚礼・法事での無理、転勤での気配り、庭掃除などがあげられます。なるべくからだや心に負担をかけないよう心がけることが大事ですが、短期間であれば主治医と相談してステロイド薬を服用してもよいでしょう。一方、楽しい旅行や心配事が解決したときなどはリウマチもよくなるようです。