![]() | リウマチの薬物療法非ステロイド性抗炎症薬、ステロイド薬
監修大阪大学医学部 整形外科教授 越智隆弘先生 東京大学医学部 アレルギー・リウマチ内科教授 山本一彦先生 編集 北里大学医学部 内科教授 近藤啓文先生 |
慢性関節リウマチ(以下リウマチ)の薬物療法は、リウマチの全体の病態を改善しようとする抗リウマチ薬と、リウマチの炎症を抑え、痛みをとる抗炎症薬の2 つに大きく分類できます。また、抗炎症薬は非ステロイド性抗炎症薬とステロイド薬の2 つに分かれます。
リウマチの薬物療法は現在、病態を改善する抗リウマチ薬が主流で、抗炎症薬は患者さんの痛みをとるという、どちらかというと対症的な使われ方をしています。
その理由は、非ステロイド性抗炎症薬やステロイド薬はリウマチの自然経過をかえることはないことが明らかになったからで、しかも、副作用が比較的多いということもわかってきています。しかし、患者さんのクオリティ・オブ・ライフ(生活の質;QOL )の改善という意味では大切な薬物です。
非ステロイド性抗炎症薬では古くからアスピリンが代表的なものでしたが、1950 年代以降ステロイド薬には属さないけれども、抗炎症効果をもつ薬が出現し、そのグループを非ステロイド性抗炎症薬と呼んでいます。
非ステロイド性抗炎症薬はからだの中のプロスタグランジンという物質を産生するシクロオキシゲナーゼという酵素を抑える働きがあります。プロスタグランジンは炎症を起こすので、これを抑えれば抗炎症作用が生じるわけです。
非ステロイド性抗炎症薬は化学的な性質で2つのグループに分けられます。1 つは酸性のグループ、そしてもう1 つは非酸性のグループです。酸性のグループは強力な抗炎症作用、鎮痛作用、解熱作用があるので、リウマチに使われるのは、酸性型です。
また作用時間の長さで、大きく2 つに分けることができます。
1 つは、短時間作用型、もう1 つは長時間作用型です。効果の持続時間が6 〜8 時間ぐらいまでの短いものと、12 〜24 時間以上のものです。
前者は1 日3 回食後服用するのが原則の薬です。後者は1 日1 回、ないし2 回ですから、朝もしくは夕1 回か朝夕2 回服用します。この短時間作用型と長時間作用型には、それぞれ長所と短所があるのですが、あまり大きな差はないと思っています。特に、飲みやすさという点で、最初は短時間作用型のものしかなかったので、長時間作用型のものが出てきたときには、患者さんにメリットが多いのではということでよく使われました。
しかし、副作用からみると、長時間作用型にはそれなりの欠点があります。今はその作用時間の長さによる大きな差はなく、むしろ、患者さんの生活のリズムに合わせて使い分けるということが一般的に行われています。
もう1 つの分類は、プロドラッグというもので、多くの薬剤が出されています。プロドラッグは、服用時にはそれ自身は薬として作用しないのですが、主に肝臓で変化して、はじめて薬として作用するものです。そういうものをプロドラッグと呼んでいます。このプロドラッグの特徴は、胃に優しいことです。ただ、プロドラッグは確かに胃の直接作用はないのですが、だからまったく胃に副作用がないとあまり過信するのは禁物です。
非ステロイド性抗炎症薬の主な作用は、シクロオキシゲナーゼという酵素を抑えて炎症を起こすプロスタグランジンの産生を抑えることです。シクロオキシゲナーゼは、体内の細胞に広く分布していて、それにより産生されたプロスタグランジンは炎症を起こす以外にからだに重要な働きもたくさんしています。そのプロスタグランジンの産生を抑えると、それなりに副作用が起こります。
非ステロイド性抗炎症薬の主な副作用の1 つは胃に対する副作用です。プロスタグランジンは胃酸ができるのを抑え、胃粘膜を保護する粘液ができるのを促進します。そして、胃粘膜の血流増加作用ももっています。これが抑えられることによって胃炎、あるいは胃潰瘍が高率に現れます。たとえば、胃潰瘍は長期間非ステロイド性抗炎症薬が使われた場合には15 %から20 %の患者さんに認められます。胃カメラでみるとなんらかの異常が50 %以上の患者さんに認められるという成績が報告されているくらいです。
次に重要なものは腎臓に対する副作用です。プロスタグランジンは腎臓の血管を拡張し腎臓の血流を増加させる働きがあります。すなわち腎臓の機能を保つ物質として作用しています。特に、腎臓に負担がかかって腎臓の機能が低下しているような状態、たとえば腎臓自身の病気のときや、心臓、肝臓の異常で腎臓に負担がかかっていると、プロスタグランジンはフルに活動して腎臓の血流を保とうとします。こういう患者さんに、非ステロイド性抗炎症薬を使うと、そこで腎不全に陥ることがありますので、注意する必要があります。
3 つ目の副作用としては気管呼吸器系で気管支喘息があります。この気管支の拡張にもプロスタグランジンが作用していますが、これを抑えることによって、気管支喘息が起こることがあります。そのため、気管支喘息の患者さんに非ステロイド性抗炎症薬を使うと、激しい気管支喘息を誘発します。それをアスピリン喘息といいます。このアスピリン喘息という言葉は、アスピリンに限らず、非ステロイド性抗炎症薬に共通する副作用です。
そのほかには出血しやすいという副作用があります。しかしこの出血しやすいという副作用を逆に活かして、心筋梗塞のあとに使って、再発を予防する薬剤としても使われています。
非ステロイド性抗炎症薬は相互作用(他の薬剤と併用すると相互に薬の作用をかえること)が多い薬として昔から知られていました。
その代表的なものはワルファリンです。ワルファリンは非ステロイド性抗炎症薬と同じように血液が固まるのを抑える性質をもった薬です。非ステロイド性抗炎症薬と併用することによって、ワルファリンの作用が強く出てしまって、そのために効きすぎて出血することがあります。
そのほかに相互作用で注意しなければいけない薬剤の1 つは降圧薬です。
ACE 阻害薬や利尿薬、β遮断薬でコントロールしている高血圧の患者さんにこの非ステロイド性抗炎症薬を使いますと相互作用で血圧が上がることになります。
そのほかの相互作用としては、経口糖尿病薬との併用で低血糖を起こすとか、あるいはジゴキシンやアミノグリコシド、メトトレキサートといった薬と一緒に使うと排泄を抑制するために作用が増強します。これらの併用も気をつけていただきたいと思います。
また、抗菌薬のニューキノロン系薬、特にエノキサシンと併用するとけいれんが生じることがあり、これも注意しなければならない相互作用です。

非ステロイド性抗炎症薬は非常に高率に胃に対して副作用があり、胃潰瘍を起こしたりするので、なるべく、空腹では飲まずに、きちんとした食事をとって、その直後に飲むとよいと思います。
それから、リウマチ以外の病気でもそうですが、非ステロイド性抗炎症薬は病気そのものを治す薬ではありませんから、あまりこれに頼りすぎることは禁物です。特に高齢者では、副作用が強く出る薬ですから、少量から飲み始めて、十分量になるまで少し時間をかけるというのが安全な飲み方です。
ステロイド薬は、非常に強い抗炎症作用と、それから大量に服用したときに抗免疫抑制作用をもちます。しかし、リウマチに使われる場合には少量投与が原則です。
なぜなら、ステロイド薬の大量投与のときと比べると、少量投与では副作用はずいぶん軽減されます。特に大量投与のときに起こるような副作用、たとえば、副腎の機能が逆に抑えられ、そのため、中止したときに副腎不全になるというようなこと、あるいは糖尿病になるとか、精神症状が出るとか、そのような副作用は起こりません。しかし、少量でもいろいろな副作用が出るので、注意して服用する必要のある薬剤です。
ステロイド薬は炎症部位で作用します。そのために、少量の場合ですが、胃や腎臓で作用するシクロオキシゲナーゼは抑えず、普通の生理的なプロスタグランジン産生にはほとんど影響しないとされています。
もう1 つのステロイド薬の利点は、リウマチの治療の場合は少量のプレドニゾロンで5mg 、あるいは7.5mg 服用しますが、リウマチの骨破壊を多少は抑制するということがわかってきました。
これは早期リウマチの場合の話ですが、リウマチに少量のステロイド薬を使うとリウマチの炎症を抑制して、その結果として骨破壊が抑制されるという成績が出て注目されています。最近副作用の不安の解消と骨破壊が少しは抑制されるかもしれないという期待とでリウマチ治療におけるステロイド薬の使い方に関心が急速に高まっています。そこで、リウマチ患者さんにステロイド薬を積極的に使用するのはよいのかということにもなるのですが、リウマチの患者さんの場合にはどうしても長期間服用しますので、副作用が問題になります。
たとえば、感染の危険が高いとか、骨粗鬆症の進展が強いとか、白内障、緑内障を起こしやすいなどの副作用は少量でも起こります。重篤な副作用も長期間服用すると起こります。また、ステロイド薬と非ステロイド性抗炎症薬を両方併用すると、胃潰瘍の危険が高いという成績も報告されています。

どういうリウマチの患者さんに、ステロイド薬を使うかというと、1 つは、高齢者です。高齢者は、非ステロイド性抗炎症薬が使いにくいのです。また、胃潰瘍はないけれども、胃潰瘍を起こしやすい方。それから、腎臓の機能の低下している人、あるいはほかに、腎臓に負担をかけるような病気、たとえば、心臓病がある患者さんには使います。もう1 つは、ステロイド薬にはほとんど妊婦への影響がないので、妊娠したリウマチ患者さんにステロイド薬だけが使われると考えてよいと思います。そのほかにリウマチ患者さんで、社会的に、行事にどうしても参加しなければならないときがあると思いますが、そうときには少し多めに、その期間だけステロイド薬をプレドニゾロンで20mg ぐらい使います。リウマチは非常によくなります。そういう短期的に使うという方法もあります。ステロイド薬は非常に副作用が強いので、なるべく使うべきでないという考えは正しいのかもしれません。しかし、非ステロイド性抗炎症薬が使いづらい患者さんには使うことが可能であると考えられています。
これからの非ステロイド性抗炎症薬の新しいタイプとして、炎症の部位に選択的に作用するものが開発されています。現在、少なくとも3種類の薬剤が開発されていますが、リウマチにどの程度効くかどうかはまだ証明されていません。しかし、副作用がかなり減るという点で、有力な武器になると考えられています。
現在市販されている非ステロイド性抗炎症薬では、ナブメトンとエトドラクが主に炎症部位への選択的な作用が強いと考えられています。また、ナブメトンはプロドラッグで、かつ長時間作用型で、副作用が少ないと思います。
炎症の部位に、より選択的に作用する非ステロイド性抗炎症薬が生まれれば、新しい使い方、たとえば、アルツハイマー病や大腸がんの予防に長期間服用できるということになるかもしれません。
今後、ステロイド薬が本当に早期リウマチの骨破壊を抑制するというデータが、4 〜5 年という長期投与で証明されれば、長期間少量のステロイド薬を積極的に使うことが、リウマチの新しい治療になる可能性があると考えます。まだそのところははっきりとした決着はついていません。
さらに最初に大量のステロイド薬を使うという研究もオランダから報告されています。最初にステロイド薬を大量に使って、それを減量していくと、ステロイド薬を使っているときはすごくよいのです。ステロイド薬をやめても1 年か1 年半くらいのところでは骨破壊は抑制されるという成績です。そういうまったく新しい治療方法も将来検討されるかもしれません。
ほっと・たいむ ストレスとリウマチ
リウマチの経過は増悪と寛解を繰り返すという、ほかの膠原病でもみられるのと同じ経過をたどります。そして、そういう自然な経過とともに、外からストレスが加わるときにもリウマチは明らかに悪化すると考えられます。ストレスといっても肉体的なストレスが加わった場合には、関節の病気ですから、関節炎が増悪することは当然ですが、精神的なストレスが加わったときに、リウマチが増悪することはときどきみられます。
たとえば、最近、私が診た60 歳くらいの患者さんで、お嬢さんが亡くなったのです。そのときに肉体的にも多少きつかったのですが、それよりも精神的なストレスがすごく強く感じられました。同じ治療を続けていて、きちっと薬を飲んでいたにもかかわらず、急激にリウマチがわるくなりました。それは時間がたち、ある程度、少しずつ自分で、そういう事実を受け止めて、受容できたと思われるようになると、リウマチもだんだんもとのレベルに戻っていきました。
そういう極端な例ではなくても、たとえば、会社のこととか、不愉快なことなどがあると、リウマチはどんどんわるくなります。それは、リウマチがわるくなった患者さんに聞きますと、どうも仕事がうまくいっていないとか、受験生を抱えているとか、そういうストレスが原因でないかと思われる例を経験します。しかし、科学的に、計量的にそのストレスとリウマチの増悪との関係は明らかになっていません。
予防については肉体的ストレスは避ける工夫が可能ですが、精神的ストレスについては受け入れる(受容)ことが大切だと思います。
それからもう1 つは、具体的にストレスの原因になるものを減らすことです。たとえば、受験の合格だとか、家庭は円満に、職場での対人関係を良好に保つ、けんかはしないなどですが、現実にはなかなか防ぐことはむずかしいです。