リウマチによいことわるいこと

療養生活のポイント

監修
大阪大学医学部 整形外科教授
越智隆弘先生
東京大学医学部 アレルギー・リウマチ内科教授
山本一彦先生
編集
大分赤十字病院副院長
織部元廣先生




序文

 リウマチ療養生活で知っておいてほしいことや注意してほしい事柄の中で重要なものを「リウマチによいことわるいこと」としてまとめてみました。主治医のお話をよく守っていただいてリウマチ療養に専念してください。



リウマチにわるいこと

■無理をすること
 リウマチの発病初期には、関節の炎症症状も強く、疲れやすい状態にあります。この時期には無理をしないことが大切です。発病初期の炎症の強い間は安静にして1 、2 カ月休んでいるだけでリウマチの炎症はおさまってきます。さらに薬物療法が加わるとコントロールがしやすくなります。がんばり屋の患者さんが無理をし、その後急速に病状がわるくなるということがありますので、くれぐれも調子のわるい時期に無理をしないよう注意してください。


■ステロイド薬を急に中止すること
 発病初期にはステロイド薬、抗リウマチ薬、非ステロイド性抗炎症薬の3 種の薬物を組み合わせて投薬されることがよくあります。
 服用している薬の中にステロイド薬があれば、1 日何mg 飲んでいるかということを患者さんは正確に知っておいたほうがよいと思います。ステロイド薬は服用を急にやめると、リバウンド(反動)と呼ばれるリウマチ病状の急な悪化がみられます。このことを忘れて患者さん自身がよくなったと思ってやめてしまい、症状が悪化したという例をみかけます。ステロイド薬は急にやめてはならないということを前もって知っておいてください。


■調子がよいからといって治療を長期中断すること
 患者さんの中には薬物療法により治ったと思ってしまって、薬を飲むことをやめてしまう方がいます。ある程度よくなった方は長期間リウマチが再発しない場合もありますが、半年から1 年、2 年経ちますとほとんどの患者さんで再発してきます。ですから、リウマチがほとんど治ったという状態になっても薬物治療は続けたほうがよいのです。飲む量を減らす、間欠的に服用する、ときどき飲むということはあっても、完全にはやめてしまわないほうがよいということを知っておいてください。


■健康な人と競うこと
 ある程度体調がよくなりますと、職場や学校へ復帰して健康な人とともに生活をすることになります。ここで注意していただきたいことは、健康な人と競わないということです。リウマチがある程度軽くなったときには健康な人に負けないようにがんばりたいという気持ちはわかりますが、長い目でみますとそういう無理が将来に悪影響を及ぼします。


■からだをぬらしたり冷やしたりすること
 雨にぬれたり、あるいは寒さに長時間からだをさらしたりして、からだを冷やすことがありますが、冷えをきっかけにリウマチが悪化することがあります。そのようなときは、お風呂にはいって十分からだを温めて、早めに痛みを和らげるということを心がけてください。また携帯型カイロなどを用意して、からだが冷えたときには温めると、それだけで痛みが和らぐこともあります。昔からリウマチを悪化させる原因として風・寒・湿(風、冷え、湿気)が知られています。


■不用意に重いものを片手で持つこと
 日常生活の中で特に注意していただきたいことは、調子のよいとき、ついお鍋を片手で持ったり、あるいは牛乳瓶とかビール瓶を持って関節を痛めてしまうことです。
 痛めやすいのはより小さい関節です。肩よりは肘、肘よりは手首、手首よりは指などです。つまりなるべく大きい関節を使って物を持つように日頃から習慣づけることが大切です。そして片手よりは両手、両手よりは全身を使って物を持つ、あるいは、物を持つときに台を近くに置いて、そこに乗せて台車を利用して運ぶというような工夫が大切です。関節を痛めたことをきっかけにリウマチが悪化していくということもありますので注意してください。とにかく関節をなるべく痛めないことが大切です。


■同じ姿勢を長時間続けること
 特に主婦の方に多いのですが、編み物とか読書、庭の草取りなど普段普通に行っているような動作でも、長時間続けるとそれが思わぬリウマチの悪化の引き金になることがあります。それでは長時間というのはどれくらいかといいますと、リウマチ患者さんの場合は30 分以上が目安です。特に編み物は首の頸椎というところを痛めやすく、頸椎障害の悪化の原因に編み物、読書がはいっています。読書でも編み物でも草取りでも何でも、20分というのを目安にしてください。20 分間一定の動作を続けたら、その後はからだをほぐすとか他の動作を取り入れてください。つい夢中になって読書や編み物をしてしまうという方はタイマーを利用して時間をはかるのもよいでしょう。


■からだを冷やす食事と消化のわるいものや甘いものをとりすぎること
 タケノコやかき氷、夏の冷たい果物などはからだを冷やすといわれていますし、イカやタコなどの海産物は消化がわるいといわれています。このようなからだを冷やす食事や消化のわるいものはリウマチを悪化させることがあります。からだを冷やした後に強く痛みが出たり、消化のわるいものをとりすぎて胃や腸の働きがわるくなると薬が飲めなくなり、病状の悪化につながります。「病は胃から」という言葉もあり、胃や腸の働きが衰えないようにふだんから食習慣に気をつけてください。また、甘いもの、たとえば砂糖とか糖分をとりすぎると昔から骨をもろくするといわれています。甘いものはカルシウムの吸収を抑えて脂肪細胞という細胞を増やします。骨は弱くなるし、体重は増すし、リウマチにとって糖分のとりすぎはよくないことが多いようです。もちろん糖分には心の鎮静作用やストレス解消作用などのよい面もありますので、甘いものがすべてわるいということではありません。とりすぎないようにしてください。


■高い枕で寝ること
 なぜ高い枕で寝るとわるいのでしょうか。頸椎は力を抜いた状態では前向きにうつむく格好になります。高い枕というのはそれをさらに助長しますので低い枕のほうが頸椎に負担がかかりません。特に仰向けに寝るときは自分の姿勢と同じくらいの低い枕で寝ることが大切です。
 首が前にずれてくることを亜脱臼といいますが、頸椎に亜脱臼が起こってきてそれがある程度ひどくなりますと、両手・両足にしびれが出てきます。しびれが少しでも出てきたときには低い枕や頸椎枕を使い、早めに頸椎のカラーを着けると予防ができます。


■民間療法を病院の治療より優先すること
 患者さんの中には主治医の指示よりも民間療法を優先する方がいます。今の西洋医学でリウマチをなかなか完全に治せないという現実があり、民間療法がいろいろなところではいり込んでいるわけですが、民間療法ではリウマチは決してよくなりません。その実態を十分知って民間療法にのめり込まないようにしてほしいものです。








リウマチによいこと

 「リウマチにわるいこと」の裏を返したものがリウマチによいことです。


■リウマチを受け入れリウマチ療養に専念すること
 患者さんの中には自分がリウマチであることを認めないで、自分は健康だといいきかせて健康な人と競ったり、無理な運動をし続ける方がいます。それでは、かえってリウマチがわるくなってしまいます。リウマチを受け入れるということは自分の現在の状態を正しく認識し、それに必要な治療を真面目に受けるということです。そのほうがはるかに予後がよいのです。これは間違いない事実ですから、リウマチを受け入れて、そして治療に専念していただきたいと思います。


■からだの異変が起こった場合にはすぐ主治医に連絡をする
 リウマチ患者さんの中には連絡を遠慮される方がしばしばみえます。そのために治療が遅れたり、軽い関節の変形が悪化してしまったりと、早めに処置すれば予防できたり治ることが遅れがちになることが多いので、少しでも異変があった場合にはすぐ主治医に連絡をするよう心がけてください。


■全身の関節の動く範囲を毎日確認する
 結婚式に出て万歳三唱をしたら手が上がらなかったり、家庭の主婦が久しぶりに高いものを取ろうと思って手を上げようとしたら上がらなかったとか、痛みがなくても知らず知らずのうちに関節の動く範囲が狭くなってしまうことが起こります。それを防ぐためにも自分の関節がどのくらい動くのかということを毎日確認してほしいと思います。それを確認しながら、運動することを取り入れているのがリウマチ体操です(リウマチセミナー5で紹介)。


■運動と安静のバランスが大切
 ときにはサボることもリウマチ患者さんにとっては必要です。リウマチは天候の影響を受けやすい病気です。ですから、昨日、一昨日はとても調子がよかったのに、今日は前線が通過して雨が降る、そういうときに突然、全身の関節が痛んで動かなくなることがあります。そんなときは無理をしないでください。一日じっとして、たとえば会社も休めるときは休ませてもらうとか、あるいはきつい場合は早退させてもらうとか、からだを動かす仕事の方の場合はデスクワークにかえていただくとか、そういう工夫をして体調がわるいときには無理をせず、体調が戻ったときには、それをある程度取り戻すように運動や仕事に従事してはいかがでしょう。
 この運動と安静のバランスが非常に大切です。長年リウマチと上手に付き合って、そして元気に暮らしている方は、運動と安静のバランスを自分なりに会得している方が多いのです。


■将来に希望をもち明るく生きること
 楽天的な生き方とか言葉はいろいろありますが、将来を悲観せずに明るく過ごしてほしいと思います。日常生活を自分で注意して過ごせば、健康な人とほとんど同じ生活を維持できますし、一生を元気に暮らしていくことも可能です。
 明るく生きてよく笑う方は痛みも和らいで軽くなります。たとえば歌を歌って、思いっきりテレビで笑って過ごすと痛みも和らいできます。これは医学的にも証明されています。将来に希望をもって楽天的に明るく生活をしていただけたらと願っています。



ほっと・たいむ リウマチの食事療法

 リウマチ患者さんにとって糖尿病ほどは食事が病状に直接影響するというわけではありませんが、リウマチという病気そのものが長期の病気ですので、正しい食事を身につけるというのは、長い目でみれば病状に影響を与えてくるものです。そこでリウマチ患者さんの食事療法の基本として4 つの点をあげてみました。

■消化のよい食事をとる
 多くの薬剤を長期に服用し続けますので、とにかく胃や腸の働きを弱めないことが大切です。それから、体力を消耗しやすいので、消化のわるいものは日頃から避けるというのが食事療法の基本です。

■カルシウムを豊富にとる
 関節炎によって関節の安静が過度になると骨を痛めやすく、骨粗鬆症を併発しやすい状態になります。さらに炎症があるため骨のカルシウムが失われます。したがって食事としてはカルシウムを豊富に、十分にとる習慣をつけておく必要があります。牛乳は毎日朝・晩1 本ずつ必ず飲むとか、牛乳の嫌いな人は、カルシウムの豊富な小魚やカルシウム製品が出ていますのでそういうものを摂取して加えるとか、とにかく十分なカルシウムを日頃から多めにとっておく必要があります。

■良質のたんぱく質をとる
 関節機能が衰えてきますとどうしても筋力が落ちてきます。筋力を保たないといけないんですね。特に発病初期は安静が大事ですが、進行期やからだが不自由になる時期は、筋肉こそが最大の関節機能の補助器官です。筋力保持が非常に大事になってきますので、たんぱく質を十分にとる必要があります。たんぱく質のなかでも消化機能を落とさずに十分なたんぱくをとるためには、良質のたんぱく価の高い食物をとらないといけません。もっともたんぱく価の高い食物はたとえば卵白、白身の魚、植物性の蛋白質、鳥のささみなどです。

■ビタミンやミネラルを豊富にとる
 リウマチの場合には炎症がからだの中で継続していますので、からだが消耗して貧血や体力の低下を起こしてきます。それに対してはビタミンやミネラルを豊富にとることも必要です。