リウマチの各種装具と
日常生活の工夫

監修
大阪大学医学部 整形外科教授
越智隆弘先生
東京大学医学部 アレルギー・リウマチ内科教授
山本一彦先生
編集
新潟県立瀬波病院副院長
村澤章先生




リリウマチが進むと

 リウマチの始まりで一番つらいことは、各関節の炎症に伴う腫れと痛みです。これは安静や各種の薬でやわらげることができますが、すべて抑えられるわけではありません。腫れや痛みが続くと、関節はかたくなったり、動きがわるくなったり、力も落ちてきます。さらに炎症が強くなって、時間がたつと関節の軟骨や骨もこわれてきます。その結果、関節は特有な変形を生じ、不安定になり、動かしたり支えたりするとき、痛みや動きにくさのため使いづらくなります。



日常生活の障害

 リウマチが進むと各関節の機能は低下し、日常生活が障害されます。上肢では、肩が動きにくくなると、手が頭にとどかなくなり整髪が困ります。肘が曲がらなくなると、手指が口元にとどかなくなります。手首や手指が動かなくなったり力がはいらないと、物がつかみにくくなったり、つまむことができにくくなります。また下肢の関節が動かなくなったり変形すると、股でも膝でも足でもどこが傷んでも歩きづらくなります。



装具

 こわれてしまった関節はもとには戻りません。しかしそのために日常生活が不自由のままでは大変困ります。こわれる前の変形や筋肉の衰えなら、関節を動かしたり、筋肉を鍛える運動療法が効果があるかもしれません。ところが傷んでしまった関節は、この運動療法だけではよくなりません。手術が必要になる場合もありますが、その前に装具が関節の支えとしてよく利用されます。
 上肢で一番よく使われる装具は手首のサポーターで、手首を曲げたり伸ばしたり、おつりをもらうときの外回しの動作時などに発生する激痛や不安定性を抑えます。これは布やゴムのベルトで作られ、親指にひっかけたあと手首にグルグル巻いてマジックテープで止めるものです。手首の痛みが軽くなり、安定性も増すため、手指の握りが強くなります。その他母指の中央の関節にリング状のスプリントをつけて関節の安定性を増し、つまむ力を強めます。人指し指〜小指のつけ根の関節が小指側に傾くと、握りにくくなって握力が落ちたり、包丁などが使いづらくなります。このような手指の尺側偏位(しゃくそくへんい)(小指側傾斜)に対しては、各指を母指側にひっぱるように工夫された傾斜防止スプリントをつけ日中使用します。
 下肢で一番使われる装具は、膝が曲がって伸びなくなる屈曲拘縮(くっきょくこうしゅく)やO 脚・X 脚などの変形に対し、その程度や骨の傷み具合によって使い分けるサポーターやジョイント付きの装具です。歩行が安定し歩行時の痛みが軽減されます。
 足関節の変形に対してはサポーターや固定装具が用いられます。特に足関節は動きより安定性が求められるため、固定装具がいろいろな材料によって自分の足に合わせて作られます。
 足指の変形も、靴が履きにくくなったり、足底部に痛みを伴う魚の目を作るなど歩行障害の大きな原因となっています。装具で変形は治せませんが、変形した足指に合った靴を作ったり、靴底に足底アーチ(縦と横のアーチが大切)をつけた足底板を当てると歩行が楽になります。
 また、リウマチで首の骨がこわれて脱臼することがしばしばみられ、肩から上肢にかけ痛みやしびれが出現し、ひどくなると指先までしびれたり、ガンコな後頭部痛などをきたすことがあります。これを放置すると麻痺が進行し手足が動かなくなるため、予防を目的にした頸椎カラー(けいついからー)が必要となります。これは首が前に倒れないようにするもので、スポンジやプラスチックで作られ、リウマチでもっとも大切な装具の1 つです。
 プラスチックなどで作られたかたいカラーの場合、固定はしっかりしていますが、歩いているときに足元がみえにくく、つまづきやすいので気をつけてください。





自助具

 日常生活の中で、食事や衣服の着脱、整容、排泄、炊事などが自力でできなくなったり困難になった場合、これらの機能を補ったり、より容易にできるように工夫された道具を自助具と呼びます。自助具のほとんどは上肢機能に関するもので、日常生活の自立をめざすものです。
 自助具には握りやすさを助けるレバー式水道栓(蛇口エイド)や大型爪切り器、ホルダー付きフォークなどや、リーチ動作を補う長柄ブラシ、クシ、リーチャー、ドレッシングエイドなどがあります。特にリーチャーはリウマチの万能器として靴下を履く、床の小物を拾う、ベッドメイキングなどのさまざまな動作の補助に使われています。特別なもので立ち上がりを助けるものとして、補高(高さを補う)マットや便座があります。
 自助具は最近デパートなどで一般用のものも市販されていますが、高価なもの、美しいものは必ずしも必要でなく、自分に合ったものを作業療法士の方とよく相談されて工夫して作製すると、使いやすく長く利用することができます。





日常生活の工夫

 リウマチの治療のためにもっとも大切なものとして、基礎療法があげられます。これはリウマチ患者さんが関節の痛みを軽くし、日常生活をより快適に過ごすために行う種々の方法で、リウマチの知識、安静と運動のバランス、ストレス対処、栄養、身の回り看護、関節機能の改善のための運動療法、住居整備などを総合して行うものです。


■自分のリウマチを知る
 まずリウマチの一般的知識を理解し、自分のリウマチの炎症の程度や変形の状態を把握し、さらにどのような治療を受けているのかを知ることが第一歩となります。


■基礎療法の実行
 安静と運動の調和をはかります。全身の安静としては睡眠を十分とることが必要で、最低8時間、昼食後1 時間とるとよいでしょう。関節の腫れや痛みの強いときは局所の安静をとるのが原則です。リウマチの炎症は日内変動があるため、家事などの仕事はこわばりの強い午前中は避け、できれば午後で体調のよい時間をうまく利用しましょう。
 リウマチの活動性はストレスや天候によっても影響を受けるため、精神の安定や保温に努めます。からだを冷やさない工夫や、湿度が高くならないような配慮が必要となります。特にクーラーや扇風機の冷風が直接肌にあたらないようにしましょう。栄養は刺激の少ない消化のよい食物を選び、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)や貧血を防ぐためにバランスよくとります。


■衣 服
 四季を問わず保温のために衣服を工夫しましょう。冷房の効きすぎには長袖やズボンで対処し、寒さには厚手の下着や靴下、肩掛けをします。できるだけゆったりと脱ぎ着のしやすい衣服を用います。ラグラン袖ファスナーやマジックテープをつけたり、袖やズボンの裾・ウエストにはゴムを使うとよいでしょう。


■家事・食事
 家事は長時間じっと立って行わないで、ときには立ち椅子を使って腰掛けて行うと膝に負担がかかりません。電子レンジ、野菜カッター、皮むき、バックカッターなど、便利な道具は大いに利用しましょう。朝のこわばりの強い人は、前夜に準備をしておくとよいでしょう。
 食器については取っ手が工夫されて持ちやすいコップ、太い持ち手の付いた食べやすいスプーンやフォーク、柄が滑らない持ちやすい物、手に固定できる物、傾斜したお皿など、自分の障害に合わせた工夫を心がけます。


■住 宅
 関節障害をもったリウマチ患者さんにとって、24時間を過ごす家屋や家の周りの環境を整えることは、生活をより容易に快適なものにします。特に住宅改造は安全性の獲得、日常生活の自立、介護者の負担の軽減などを目的として行われます。
 まずはじめに改造しなくても対応できないか考えます。部屋の使い方や家具の位置をかえたり、装具や自助具を利用したり、ポータブルトイレやベッドなどの日常生活用具を取り入れたり、特殊なものとして電動ベッドや車椅子を利用することで対応します。どうしても改造が必要なときは、理学療法士や作業療法士などに相談してプランを立て、経済的な面では公的資金の援助を受けるためにソーシャルワーカーやケアマネジャーに相談します。
 住宅改造でもっとも多いのは安全の確保のための段差の解消、手すりの設置、出入り口の幅員の確保などがあります。日常生活を快適にするためにはトイレ、浴室、台所の改造が行われます。車椅子や支え歩行などの介助を受けている場合は、スペース、幅、高さなどの移動の工夫が必要です。


■医療と介護保険
 リウマチの日常生活を支援するために、医療サービスと保健・福祉サービスなどがあります。医療は外来・入院治療によって、薬、リハビリテーション、手術などを担い、保健・福祉は身体障害者手帳や介護保険によって在宅生活を支援します。たとえば装具や自助具は医療から処方され、住宅改造は介護保険によって援助されます。これらのシステムを十分理解され、医師、看護婦、ソーシャルワーカー、理学療法士、作業療法士、保健婦、ケアマネジャーなどの方々と相談して自分に合った日常生活を工夫することが大切です。



ほっと・たいむ リウマチと介護保険

 平成12年4月より介護保険制度がスタートしました。この制度はリウマチ患者さんにとって、従来の保健・福祉制度がドッキングした新しい制度です。40歳以上のリウマチ患者さんは全員この制度を利用できます。
 介護保険の目的は、患者さんが日常生活を自立できるように各種サービスを提供するものです。サービスの内容は住宅サービスと施設サービスに大きく分けられます。住宅で生活している患者さんには、家事や身体介護を受けるホームヘルプやデイサービス・デイケアなどがあり、施設に入所する必要がある患者さんには各種の福祉・保健・医療施設が利用できます。
 サービスを利用するためには介護保険の認定を受けなければなりません。まず居住地の市町村の窓口に申請します。すると本人への訪問調査とかかりつけ医の意見書によって介護の必要性、程度が判定され、要支援から要介護1 〜5 までにランク付けされます。サービスはこの要介護度によって利用の仕方や費用の上限が異なってきます。
 リウマチ患者さんにとっては、病気療養のために医療保険とともに介護保険も必須のものとなってきました。もちろん身体障害者手帳はこれからも大切な福祉制度として残りますが、車椅子や歩行器・ベッドなどの福祉用具や住宅改造などは介護保険が優先するため、ぜひ認定を受けるようにしましょう。
 介護保険は始まったばかりで認定方法やサービスの内容・利用度、費用の負担などまだ問題が多く残っていますが、今後リウマチ支援のための大きな柱となるよう見守りましょう。