「目はどうして物を見ることができるのでしょうか?」
普段は意識することが少ないものの、眼球の中では角膜・水晶体・網膜・視神経など複数の組織が連携して、光の情報を脳へ届けています。
本記事では、
- ものが見える仕組み
- 眼球を構成する主な部位
- 部位ごとの役割
- 見え方に異常が起こる仕組み
- 代表的な目の病気
を図解を交えながら紹介します。
目で「ものが見える」のはなぜ?まずは仕組みを理解しよう
私たちは普段、何気なく景色を見たり文字を読んだりしていますが、「ものが見える」までには、眼球の中にあるさまざまな組織と脳が連携しています。
目の仕組みは、カメラに置き換えるとイメージしやすくなります。角膜や水晶体がレンズのように光を屈折させ、虹彩・瞳孔が目に入る光の量を調整し、網膜が光を受け取ります。そして網膜で光の情報が電気信号へ変換され、視神経を通じて脳へ伝わることで、私たちは初めて「見えた」と認識できます。
目に入った光が脳へ届くまでの大まかな流れは、次のとおりです。
① 外からの光が目に入る
↓
② 角膜で光が屈折する
↓
③ 瞳孔を通って眼球内部へ入る
↓
④ 水晶体でピントを調節する
↓
⑤ 硝子体を通過する
↓
⑥ 網膜が光を受け取る
↓
⑦ 光の情報が電気信号に変換される
↓
⑧ 視神経を通って脳へ伝わる
↓
⑨ 脳が映像として認識する
日本眼科学会でも、光は「角膜→前房→瞳孔→水晶体→硝子体→網膜」の順に進み、網膜で電気信号へ変換された後、視神経を介して脳へ伝わると説明されています。
※参考:日本眼科学会「眼の構造」
それぞれの組織がどのような役割を担っているのか、もう少し詳しく見ていきましょう。
角膜と瞳孔で光を取り込む
外から入ってきた光が最初に通る重要な組織が角膜(かくまく)です。角膜は眼球の前面にある透明な組織で、目の中に光を取り込むだけでなく、光を屈折させる役割も担っています。
角膜を通った光は前房を進み、虹彩の中央にある瞳孔(どうこう)を通過します。
虹彩は、いわゆる「茶目」と呼ばれる部分です。周囲の明るさに応じて瞳孔の大きさを変化させ、眼球内部へ入る光の量を調整しています。カメラでいえば、光量を調節する「絞り」に近い役割です。
つまり、角膜と瞳孔は単なる光の入口ではなく、適切な量の光を眼球内部へ導くための重要な仕組みといえます。
水晶体でピントを合わせる
瞳孔を通過した光は、次に水晶体(すいしょうたい)へ進みます。
水晶体は透明な組織で、角膜とともに光を屈折させ、網膜上に像を結ぶための重要な役割を担っています。
見る対象までの距離が変わっても、私たちが近くの文字から遠くの景色まで見ることができるのは、目にピントを調節する仕組みが備わっているためです。
水晶体をカメラのレンズに例えてみます。
そのため、
角膜 光を大きく屈折させる
水晶体 網膜にピントを合わせるために働く
とイメージすると、それぞれの役割を理解しやすいでしょう。
水晶体を通った光は、その後、眼球内部を満たしている透明な**硝子体(しょうしたい)**を通って網膜へ向かいます。
網膜で光を感じ取る
眼球の奥にある網膜(もうまく)は、目に入ってきた光を受け取る組織です。
カメラに例えると、撮像素子やフィルムのような役割にあたります。ただし、網膜は単純に映像を映すだけではありません。受け取った光を神経が扱える電気信号へ変換するという重要な働きをしています。
網膜には、光を感じる「視細胞」が存在します。視細胞には主に錐体(すいたい)細胞と杆体(かんたい)細胞の2種類があります。
錐体細胞は網膜中央の黄斑に多く集まり、細かいものを見分ける視力や色覚に関係します。一方、杆体細胞は網膜の周辺部に多く分布し、暗い場所で光を感じたり、周辺の視野を捉えたりする役割を担っています。
このため網膜に障害が起こると、単に「ぼやける」だけでなく、視野が欠ける、暗い場所で見えにくくなる、中心部分が見えにくくなるなど、障害される場所によってさまざまな見え方の変化が生じます。
視神経から脳へ情報を届ける
網膜で電気信号へ変換された情報は、視神経(ししんけい)を通って脳へ送られます。
視神経は、網膜で受け取った光の情報を脳へ伝える神経線維の集まりです。眼球だけで「見る」という働きが完成するわけではなく、視神経によって情報が脳へ運ばれ、脳がその情報を処理することで、私たちは形や色、位置などを認識できます。
つまり、「ものが見える」という現象は、
光を取り込む
→ ピントを合わせる
→ 網膜で光を感じる
→ 電気信号に変える
→ 視神経で脳へ届ける
→ 脳で映像として認識する
という一連の仕組みによって成り立っています。
角膜や水晶体、網膜、視神経のどこか一つでも正常に働かなくなると、見え方に影響が生じる可能性があります。後ほど紹介する白内障や緑内障、加齢黄斑変性などの目の病気も、こうした「見る仕組み」を構成する組織に異常が起こることで発症します。
眼球の構造と各部位の役割
眼球は、光を取り込む部分、ピントを調節する部分、光を感じ取る部分など、さまざまな組織が組み合わさってできています。
それぞれの部位が異なる役割を担い、連携して働くことで、私たちは遠くの景色から手元の文字まで見ることができます。
ここからは眼球を構成する主な部位について、役割ごとに詳しく見ていきましょう。
光を取り込む角膜・虹彩・瞳孔
目に入ってくる光に最初に関わるのが、眼球の前方にある角膜・虹彩・瞳孔です。
角膜が外からの光を取り込みながら屈折させ、虹彩と瞳孔が眼球内部へ入る光の量を調節します。
角膜(かくまく)
角膜は、眼球の最も前方にある透明な組織です。目を正面から見たときに「黒目」と呼ばれている部分の表面を覆っています。
透明なため光を眼球内部へ通すことができるだけでなく、入ってきた光を屈折させる働きがあります。水晶体とともに、網膜上に像を結ぶための重要な役割を担っています。
カメラに例えるとレンズに近い働きをしていますが、実際には水晶体だけでなく角膜も目のピント形成に大きく関わっている組織です。
角膜に傷や濁り、形状の変化などが生じると、光が正常に眼内へ届きにくくなり、見え方に影響することがあります。
虹彩(こうさい)
虹彩は、角膜の奥にある円形の組織です。一般に「茶目」と呼ばれている部分にあたり、中央には瞳孔があります。
虹彩の大きな役割は、瞳孔の大きさを変化させて、眼球内部へ入る光の量を調節することです。
カメラでいう「絞り」に近い働きをしており、周囲の明るさに応じて瞳孔を大きくしたり小さくしたりします。
このため、明るい場所から暗い場所へ移動したときや、逆に暗い場所から明るい場所へ移動したときにも、目に入る光の量を適切に調節できます。
瞳孔(どうこう)
瞳孔(どうこう)は、虹彩の中央にある開口部です。目を正面から見たときに黒く見える部分にあたり、ここを通って光が眼球内部へ入っていきます。
瞳孔そのものが独立して動くのではなく、周囲にある虹彩の働きによって大きさが変化します。
明るい場所では瞳孔が小さくなって入ってくる光を抑え、暗い場所では瞳孔が大きくなって、より多くの光を取り込みやすくなります。
つまり、角膜が光を取り込んで屈折させ、虹彩と瞳孔が光の量を調節することで、次の水晶体へ適切に光を届けています。
ピント調節に関わる水晶体・毛様体・チン小帯
角膜と瞳孔を通った光は、次に水晶体へ進みます。
このとき重要になるのが、水晶体・毛様体・チン小帯の連携です。
水晶体は光を屈折させる透明な組織ですが、その形を変化させることで、近くを見るときと遠くを見るときのピント調節にも関わっています。水晶体の形状を調節する仕組みに関係しているのが、毛様体とチン小帯です。
水晶体(すいしょうたい)
水晶体は、虹彩や瞳孔の奥に位置する透明な組織です。
角膜とともに光を屈折させ、網膜上にピントを合わせる働きをしています。カメラでいうレンズに近い部分です。
ただし、カメラの固定されたレンズとは異なり、人の水晶体は見る対象までの距離に応じて形状を変えることができます。
近くを見るときには水晶体がより丸みを帯びて屈折力が強くなり、近くの対象にピントを合わせやすくなります。反対に遠くを見るときには水晶体がより平らな形になり、屈折力が弱くなります。
このように水晶体の形を変えて焦点を合わせる働きを調節といいます。
毛様体(もうようたい)
毛様体は、水晶体の周囲に位置する組織で、内部には毛様体筋があります。
毛様体筋が収縮したり緩んだりすることで、水晶体につながるチン小帯の張力が変化し、水晶体の形状を調節します。
近くを見るときには毛様体筋が収縮し、チン小帯の張力が弱くなります。すると水晶体は本来の弾力によって丸みを帯び、近くにピントを合わせやすくなります。
遠くを見るときには毛様体筋が緩み、チン小帯に張力がかかることで水晶体がより平らになり、遠くにピントを合わせやすくなります。
また、毛様体には眼球前方を満たす房水(ぼうすい)を作る働きもあります。房水については後ほど詳しく解説します。
チン小帯(ちんしょうたい)
チン小帯は、毛様体と水晶体をつないでいる細い線維です。水晶体を眼内の適切な位置に支えるとともに、毛様体筋の動きを水晶体へ伝える役割があります。
毛様体筋の収縮や弛緩によってチン小帯にかかる張力が変わり、それに合わせて水晶体の形状も変化します。
ピント調節の仕組みを簡単に整理すると、次のようになります。
毛様体筋が動く
↓
チン小帯の張力が変化する
↓
水晶体の形が変わる
↓
光の屈折力が変化する
↓
見たい対象にピントが合う
このように、ピント合わせは水晶体だけで行われているわけではありません。毛様体・チン小帯・水晶体が連携して働くことで、見る距離に応じたピント調節が行われています。
眼球内部で光を通す房水・硝子体
角膜や瞳孔から眼球内部へ入った光は、そのまま網膜へ届くわけではありません。眼球の内部には、光を通す透明な液体や組織があり、網膜まで光を届けるための通り道を作っています。
その代表的なものが房水と硝子体です。
どちらも透明ですが、房水は眼球前方を満たす液体、硝子体は眼球内部の大部分を満たすゼリー状の組織という違いがあります。
房水(ぼうすい)
房水は、角膜と水晶体の周辺にある透明な液体です。
毛様体で作られた房水は、眼球前方を循環しながら角膜や水晶体へ栄養を届け、老廃物を受け取る役割を担っています。その後、虹彩の付け根にある隅角へ流れ、主に線維柱帯やシュレム管を通って眼外へ排出されます。
房水が流れる大まかな経路は、次のようになります。
毛様体で房水が作られる
↓
水晶体の前方へ流れる
↓
瞳孔を通過する
↓
角膜と虹彩の間を流れる
↓
隅角へ向かう
↓
線維柱帯・シュレム管などを通って排出される
房水は常に作られる一方で排出もされており、この産生と排出のバランスが眼圧と深く関係しています。
房水が正常に排出されにくくなると、眼球内部の圧力である眼圧が上昇することがあります。緑内障には、この房水の排出経路が関係するタイプもあります。
そのため房水は、単に光が通過する透明な液体というだけでなく、角膜や水晶体の状態を保ち、眼圧にも関係する重要な存在です。
硝子体(しょうしたい)
硝子体は、水晶体の後ろから網膜までの眼球内部を満たしている透明なゼリー状の組織です。
眼球内部の大部分を占めており、眼球の形を内側から保つとともに、水晶体を通った光を網膜まで届ける通り道になっています。
ものを見るときには、
角膜
↓
瞳孔
↓
水晶体
↓
硝子体
↓
網膜
という順番で光が進みます。日本眼科学会でも、眼に入った光が水晶体や硝子体を通って網膜へ届く仕組みが説明されています。
正常な硝子体は透明であるため、光を網膜まで通すことができます。一方、硝子体に出血や濁りなどが生じると、網膜へ届く光が妨げられ、かすみなどの見え方の変化につながることがあります。
また、硝子体は加齢などによって状態が変化することがあり、後部硝子体剥離などに伴って飛蚊症が現れる場合もあります。飛蚊症の多くは生理的なものですが、網膜裂孔や網膜剥離などが関係することもあるため、急に症状が増えた場合などには注意が必要です。
このように、房水と硝子体はいずれも透明で光を通す役割を持っていますが、それぞれ異なる働きを担っています。
房水は眼球前方を循環する液体で、角膜や水晶体への栄養供給や眼圧に関係する
硝子体は眼球内部の大部分を満たし、眼球の形を保ちながら光を網膜へ届ける
と考えると違いを理解しやすいでしょう。
光を感じて脳へ伝える網膜・黄斑・視神経
角膜や水晶体、硝子体を通過した光が最後に到達するのが、眼球の奥にある**網膜(もうまく)**です。
しかし、網膜に光が届いただけでは「見えた」ことにはなりません。
網膜で光を電気信号に変換し、その情報を視神経から脳へ伝えることで、初めて私たちは目の前にあるものを映像として認識できます。
網膜(もうまく)
網膜は、眼球の奥側に広がっている薄い組織で、目に入ってきた光を感じ取る役割を担っています。
カメラに例えるとフィルムや撮像素子に近い部分ですが、単純に像を映し出しているわけではありません。
網膜には光を感じ取る視細胞が存在しており、受け取った光の情報を神経が扱える電気信号へ変換します。そして、その情報が網膜内の神経を経て視神経へ送られていきます。
ものを見るまでの流れを簡単にすると、
光
↓
網膜の視細胞が受け取る
↓
電気信号へ変換される
↓
視神経へ送られる
↓
脳で映像として認識される
となります。
網膜は、いわば外から入ってきた光を脳が理解できる情報に変えるセンサーのような役割を担っているのです。
杆体(かんたい)細胞と錐体(すいたい)細胞
網膜にある視細胞は、大きく杆体細胞と錐体細胞の2種類に分けられます。
| 視細胞 | 主な役割 |
|---|---|
| 杆体細胞 | 暗い場所で光を感じる、周辺の視野を捉える |
| 錐体細胞 | 色を見分ける、細かいものを見る |
杆体細胞は網膜の周辺部に多く分布しており、暗い場所で光を感じたり、周辺の視野を捉えたりする働きを担っています。
一方の錐体細胞は網膜中央の黄斑付近に集中しており、視力や色覚に重要な役割を担います。
たとえば暗い場所で周囲のものを捉えやすいのは杆体細胞の働きが関係しており、明るい場所で文字を読んだり色を見分けたりするときには錐体細胞が重要になります。
この2種類の視細胞がそれぞれ異なる役割を担うことで、私たちは明るさや色、形などさまざまな視覚情報を捉えることができます。
黄斑(おうはん)と中心窩(ちゅうしんか)
黄斑は、網膜の中央付近にある、ものを細かく見るために特に重要な部分です。
網膜全体で同じように細かいものを見ているわけではありません。黄斑には、細かいものを見たり色を識別したりする錐体細胞が多く集まっています。
そして黄斑の中心部分にあるのが中心窩です。
たとえば、
- 本やスマートフォンの文字を読む
- 人の顔を見分ける
- 細かな模様を見る
- 色を見分ける
といった、対象を細かく見るときには黄斑や中心窩が重要な役割を担います。
そのため、黄斑に異常が生じると、視野全体が見えなくなるというより、見ようとしている中心部分が見えにくい、ゆがんで見えるといった症状につながることがあります。
後ほど紹介する加齢黄斑変性は、この黄斑に障害が生じる代表的な病気の一つです。
視神経(ししんけい)
視神経は、網膜で受け取った視覚情報を脳へ伝えるための神経です。
網膜で光の情報が電気信号へ変換された後、その情報は網膜内の神経細胞を通り、視神経へ集められます。そして視神経を経由して脳へ届けられ、脳が情報を処理することで、形や色、位置などを認識できるようになります。
つまり、網膜と視神経の関係は、
網膜が光を感じ取る
↓
電気信号へ変換する
↓
視神経が脳へ情報を運ぶ
↓
脳が映像として認識する
と整理できます。
この視神経に障害が起こる代表的な病気が緑内障です。
緑内障では、網膜から脳へ情報を運ぶ神経線維などが障害されることで、視野に異常が生じます。
このように「見る」という働きは眼球だけで完結しているわけではありません。網膜が光を感じ取り、視神経が情報を脳へ運び、脳がその情報を処理するという一連の働きによって、私たちはものを見ることができています。
眼球を守ったり動かしたりする組織
眼球の周囲には、光を感じる仕組みとは別に、目を外部の刺激から守ったり、眼球を動かしたりするための組織があります。
まぶたや結膜、涙を作る涙腺、眼球を収める眼窩、眼球を動かす外眼筋などがそれぞれ異なる役割を担い、目の機能を支えています。
強膜(きょうまく)
強膜は、眼球の外側を覆っている丈夫な膜です。一般に「白目」と呼ばれる部分にあたり、眼球の形を保ちながら、内部の組織を外部からの刺激や衝撃から守る役割があります。
結膜(けつまく)
結膜は、白目の表面からまぶたの裏側までを覆っている薄い膜です。眼球とまぶたの間をつなぎ、異物が眼球の奥へ入り込むのを防ぐなど、目の表面を保護する役割を担っています。
眼瞼(がんけん)
眼瞼とは、まぶたのことです。目を閉じることで眼球を光や異物、衝撃などから守ります。また、まばたきによって涙を眼球表面に広げ、角膜や結膜が乾燥するのを防いでいます。
涙腺(るいせん)と涙道(るいどう)
涙腺では涙が作られ、まばたきによって眼球表面に広がります。その後、涙は目頭にある涙点から涙小管、涙嚢、鼻涙管へと流れます。この涙の排出経路をまとめて涙道と呼びます。
眼窩(がんか)
眼窩は、頭蓋骨にある眼球を収めるくぼみです。眼球のほか、外眼筋や神経、血管、眼窩脂肪などが収まっています。眼窩脂肪はクッションのような役割を果たし、眼球を衝撃から守っています。
外眼筋(がいがんきん)
外眼筋は、眼球の周囲にある6つの筋肉です。それぞれの筋肉が連携して働くことで、眼球を上下左右や斜め方向へ動かします。左右の目を同じ方向へ動かすためにも重要な組織です。
眼のどこに異常が起こると、見え方が変わる?
ここまで見てきたように、「ものが見える」ためには、角膜や水晶体で光を屈折させ、網膜で受け取った情報を視神経から脳へ届ける必要があります。
そのため、見え方の異常は「目全体」に起こるというより、光の通り道や網膜、視神経など、異常が生じる場所によって現れ方が異なります。
眼の部位と代表的な見え方・病気の関係を簡単に整理すると、次のようになります。
| 異常が起こる場所・状態 | 見え方に影響する仕組み | 代表的な病気・状態 |
|---|---|---|
| 角膜 | 光が正常に屈折・通過しにくくなる | 角膜の濁りや形状異常など |
| 水晶体 | 光が網膜まで届きにくくなる | 白内障 |
| 焦点の位置 | 網膜上にきれいに焦点が合わない | 近視・遠視・乱視 |
| 網膜・黄斑 | 光を正常に感じ取りにくくなる | 糖尿病網膜症・加齢黄斑変性・網膜色素変性など |
| 視神経 | 視覚情報を正常に脳へ伝えにくくなる | 緑内障など |
角膜に異常が起こると光を正常に取り込みにくくなる
角膜は、眼球の最も前方にあり、外から入ってきた光を屈折させる重要な組織です。水晶体とともに、網膜上に像を結ぶためのレンズのような役割を担っています。
そのため、角膜に濁りが生じたり形状が変化したりすると、光が正常に通過・屈折しにくくなり、かすんで見えたり、ものがぼやけて見えたりする原因になることがあります。
角膜に異常が起こる
↓
光が正常に通過・屈折しにくくなる
↓
かすみや見えにくさにつながることがある
水晶体が濁ると光が網膜まで届きにくくなる
水晶体は、角膜から入った光を屈折させ、網膜にピントを合わせるために重要な組織です。
本来は透明ですが、水晶体が濁ると光が通りにくくなり、かすみやまぶしさ、視力低下などが現れることがあります。この水晶体の混濁によって視機能が低下する代表的な病気が白内障です。
水晶体が濁る
↓
光が網膜まで届きにくくなる
↓
かすみ・まぶしさ・視力低下などが起こる
↓
白内障
眼の構造を理解してから見ると、「なぜ白内障になると見えにくくなるのか」がイメージしやすくなります。
焦点が網膜上からずれるとぼやけて見える
角膜や水晶体を通った光は、正常な状態では網膜上に焦点が合うことで、ものをはっきり見ることができます。
この焦点が網膜上に適切に合わない状態が屈折異常です。代表的なものに近視・遠視・乱視があります。
近視では主に焦点が網膜より手前に結ばれ、遠視では網膜より後方に結ばれる状態になります。乱視では角膜などの形状によって光の屈折にばらつきが生じ、一点に焦点を結びにくくなります。
焦点が網膜上に合わない
↓
網膜上に鮮明な像を作りにくくなる
↓
ぼやけて見える
↓
近視・遠視・乱視
白内障のように光の通り道が濁っているわけではなく、光の焦点が合う位置に問題がある点が大きな違いです。
網膜や黄斑に異常が起こると光を正常に感じ取りにくくなる
網膜は、眼球の奥で光を受け取り、電気信号へ変換する組織です。その中心部分にある黄斑は、見ようとする対象を細かく捉えるために特に重要な場所です。
そのため、網膜や黄斑に障害が起こると、光そのものは眼球内部に入っていても、その情報を正常に受け取れなくなることがあります。
たとえば、糖尿病網膜症は糖尿病によって網膜の血管が障害される病気です。進行すると網膜の出血や浮腫などが生じ、視力に影響することがあります。
加齢黄斑変性は網膜の中心にある黄斑が障害されるため、見ようとする中心部分が見えにくくなる病気です。
また、網膜色素変性は光を感じる網膜に異常が生じる遺伝性の病気で、夜盲や視野狭窄、視力低下などが特徴とされています。
網膜・黄斑に異常が起こる
↓
光の情報を正常に感じ取りにくくなる
↓
視力低下・視野の異常・ゆがみなどにつながる
↓
糖尿病網膜症・加齢黄斑変性・網膜色素変性など
同じ「見えにくい」という症状でも、障害される網膜の場所や病気によって見え方は異なります。
視神経に障害が起こると情報を脳へ伝えにくくなる
網膜で光を電気信号へ変換しても、その情報が脳まで届かなければ正常にものを見ることはできません。
網膜で受け取った視覚情報を脳へ伝える役割を担っているのが視神経です。
この情報伝達に関わる網膜神経節細胞やその軸索が障害される代表的な病気が緑内障です。緑内障では障害が進むことで視野が欠けたり、視力が低下したりすることがあります。一方、初期には視野の異常を自覚しにくい場合もあります。
視神経などに障害が起こる
↓
網膜で得た情報を脳へ伝えにくくなる
↓
視野が欠けるなどの異常が起こる
↓
緑内障など
このように、見え方の異常は原因となる場所によって仕組みが異なります。
光を取り込む角膜、ピントを合わせる水晶体、光を感じる網膜、情報を脳へ運ぶ視神経というそれぞれの役割を理解しておくと、目の病気によって見え方が変化する理由も理解しやすくなります。
次からは、白内障や緑内障、加齢黄斑変性など、代表的な目の病気について詳しく見ていきましょう。
代表的な目の病気
目の病気は、異常が起こる場所によって見え方や症状が異なります。
ここでは、これまで紹介してきた眼球の構造と結びつけながら、白内障、緑内障、加齢黄斑変性、糖尿病網膜症、網膜色素変性、近視・遠視・乱視について紹介します。
それぞれ「どこに異常が起こるのか」を意識すると、病気によって見え方が変わる理由も理解しやすくなります。
白内障
異常が起こる場所
水晶体
どんな病気?
白内障は、目の中でレンズのような役割を担っている水晶体が濁ることで、視機能が低下する病気です。
本来透明な水晶体が濁ると、外から入ってきた光が網膜まで届きにくくなります。
最も多い原因は加齢ですが、糖尿病、強度近視、アトピー性皮膚炎、外傷、薬剤などが関係する場合もあります。
主な症状
初期には自覚症状がない場合もありますが、進行すると、徐々に視力が低下したり、かすんで見えたり、光をまぶしく感じたりすることがあります。また、片目で見ても物が二重、三重に見える場合があります。白内障は一般的にはゆっくり進行します。
主な検査
眼科では視力検査のほか、細隙灯顕微鏡を使って水晶体の濁りなどを観察します。必要に応じて眼底なども調べ、見えにくさの原因となる別の病気がないか確認します。
主な治療
白内障の進行を遅らせる目的で点眼薬などが使用される場合がありますが、一度濁った水晶体を薬によって透明な状態へ戻すことはできません。
見えにくさが日常生活に影響するようになった場合などには、濁った水晶体を取り除き、代わりに人工の眼内レンズを挿入する手術が主な治療になります。
緑内障
異常が起こる場所
網膜神経節細胞・視神経
どんな病気?
緑内障は、網膜で受け取った視覚情報を脳へ伝える網膜神経節細胞やその神経線維が障害され、視野などに異常が生じる病気です。
眼圧が正常範囲でも緑内障になることがあります。 日本眼科学会によると、日本では多くの緑内障患者の眼圧が正常範囲内であることが分かっています。
※参考:Suzuki Y, Iwase A, Araie M, et al.「Risk factors for open-angle glaucoma in a Japanese population: the Tajimi Study」Ophthalmology. 2006;113(9):1613-1617.
主な症状
代表的なのは視野が徐々に欠けていく症状です。ただし、初期には視野の異常を自覚しにくく、気づかないまま進行する場合があります。
一方、急性緑内障発作では、眼圧が急激に上昇し、強い眼痛や視力低下、吐き気、嘔吐などが生じることがあります。
主な検査
緑内障の診断では、眼圧検査だけで判断するわけではありません。
視力検査、眼圧検査、眼底検査、視野検査、隅角検査、光干渉断層計を使ったOCT検査などを組み合わせ、視神経や網膜の状態、視野の変化などを確認します。
主な治療
現在、緑内障の進行を抑えるために有効性が確認されている基本的な方法は眼圧を下げることです。正常範囲の眼圧であっても、患者ごとの状態に応じてさらに眼圧を下げることがあります。
治療には点眼薬などによる薬物療法、レーザー治療、手術などがあり、緑内障の種類や進行状態に応じて選択されます。
加齢黄斑変性
異常が起こる場所
黄斑
どんな病気?
加齢黄斑変性は、加齢などに伴って網膜の中心にある黄斑が障害される病気です。
黄斑は、文字を読む、人の顔を見分けるなど、見ようとしているものを細かく捉えるために重要な場所です。そのため、黄斑に異常が起こると視野の中心部分に症状が現れやすくなります。
加齢黄斑変性は、大きく新生血管型と萎縮型に分けられます。旧来「滲出型」と呼ばれていたタイプは、現在の日本眼科学会では新生血管型として説明されています。
※参考:日本眼科学会「加齢黄斑変性」
主な症状
代表的なのは、
- 物がゆがんで見える
- 見ようとしている中心部分が暗く見える
- 視力が低下する
- 色が分かりにくくなる
といった症状です。
黄斑は中心視野を担うため、周辺部分は見えていても、文字や人の顔など見ようとした場所が見えにくくなることがあります。
主な検査
視力検査や眼底検査に加え、方眼紙状の図を見てゆがみを確認するアムスラー検査や、網膜の断面を詳しく調べるOCT検査などが行われます。
必要に応じてOCTアンギオグラフィーや眼底造影検査などを組み合わせて、黄斑や異常血管の状態を詳しく調べます。
主な治療
新生血管型では、異常な血管の発生に関係するVEGFの働きを抑える抗VEGF薬を眼内へ注射する治療が中心となっています。必要に応じて光線力学的療法などが組み合わせられる場合もあります。
また、萎縮型についても治療は進歩しています。日本眼科学会によると、2025年には地図状萎縮の進行を遅らせることを目的とした眼内注射薬が国内で使用できるようになりました。ただし、失われた視力を元に戻す治療ではなく、対象となるかは検査結果などをもとに判断されます。
※参考:日本眼科学会「加齢黄斑変性」
糖尿病網膜症
異常が起こる場所
網膜の血管
どんな病気?
糖尿病網膜症は、糖尿病によって網膜の細い血管が障害される病気です。
高血糖の状態が長く続くと網膜の血管が傷み、血液成分が漏れたり、出血やむくみ、血管の閉塞などが起こったりします。
さらに進行すると酸素不足を補うために異常な新生血管が作られ、硝子体出血や網膜剥離につながる場合があります。
主な症状
初期には自覚症状がほとんどなく、気づかないまま進行する場合があります。
進行すると、かすんで見える、視力が低下する、視野の一部が暗くなる、飛蚊症が増えるといった症状が現れることがあります。出血の程度によっては急激に視力が低下する場合もあります。
主な検査
糖尿病網膜症では、散瞳して網膜を観察する眼底検査が重要です。
さらに、血管からの漏れや閉塞などを調べる蛍光眼底造影検査や、黄斑のむくみを調べるOCT検査などが行われます。糖尿病と診断された場合は、症状がなくても定期的に眼科を受診することが重要です。
主な治療
まず重要になるのが、血糖だけでなく血圧や脂質などを含めた全身状態の管理です。
眼の状態に応じて、網膜光凝固術、抗VEGF薬の硝子体内注射、硝子体手術などが行われます。治療法は糖尿病網膜症の進行段階や、糖尿病黄斑浮腫の有無などによって異なります。
網膜色素変性
異常が起こる場所
網膜・視細胞
どんな病気?
網膜色素変性は、光を感じる網膜に異常が起こる遺伝性の病気です。
網膜には暗い場所での視覚や周辺視野に関係する杆体細胞と、視力や色覚に関係する錐体細胞があります。網膜色素変性では一般的に杆体細胞から障害が始まり、徐々に錐体細胞にも障害が及びます。
主な症状
代表的な症状は、暗いところで見えにくくなる夜盲、見える範囲が狭くなる視野狭窄、そして視力低下です。
多くの場合はゆっくりと進行しますが、進行速度や症状の現れ方には個人差があります。
主な検査
眼底検査や視野検査のほか、網膜が光に反応して生じる電気信号を測定する網膜電図、眼底自発蛍光などを用いて網膜の状態や機能を評価します。必要に応じて遺伝学的検査が検討される場合もあります。
主な治療
多くの網膜色素変性では現在も根本的な治療法が確立されていませんが、RPE65遺伝子の異常が原因となる一部の患者については、日本国内でも承認された治療法が登場しています。
ただし対象となる患者は一部に限られ、それ以外の原因遺伝子については、現在も国内外でさまざまな治療法の研究や臨床試験が進められています。視機能が低下した場合には、残された視機能を活用するロービジョンケアも重要になります。
近視・遠視・乱視
異常が起こる場所
目の屈折状態
どんな状態?
近視・遠視・乱視は、角膜や水晶体を通った光が網膜上に適切に焦点を結べない屈折異常です。
正常な状態である正視では、遠くから入ってきた光が網膜上に焦点を結びます。一方、近視や遠視では焦点の位置が網膜からずれ、乱視では光が一点に集まりにくくなります。
違いを簡単に整理すると、
正視
↓
網膜上に焦点が合う
近視
↓
網膜より前に焦点が合う
遠視
↓
網膜より後ろに焦点が合う
乱視
↓
光が一点に集まりにくい
となります。
主な症状
近視では遠くがぼやけて見えやすくなります。
遠視では遠くから入った光の焦点が網膜より後方に位置しますが、年齢や調節力によって見え方は異なります。
乱視では像がぼやけるほか、場合によっては片目で見ても物が二重、三重に見えることがあります。
主な検査
視力検査や屈折検査によって、近視・遠視・乱視の程度を確認します。必要に応じて調節の影響を抑える点眼薬を使った屈折検査や、眼軸長などを調べる検査が行われることもあります。
主な矯正方法
基本となるのは眼鏡やコンタクトレンズによる矯正です。
また、目の状態や年齢、希望などによっては、LASIKやSMILE、有水晶体眼内レンズなどの屈折矯正手術が選択肢となる場合もあります。屈折矯正手術にはそれぞれ適応条件や特徴があるため、眼科で詳しい検査を受けたうえで検討することが重要です。
まとめ 眼は複数の組織が連携して「見る」働きを支えている
眼は、ひとつの組織だけでものを見ているわけではありません。
角膜や水晶体で光を取り込みながら屈折させ、網膜で光の情報を受け取り、視神経を通して脳へ伝えることで、私たちは初めて目の前のものを認識できます。
ものが見えるまでの流れを簡単に整理すると、次のようになります。
角膜・水晶体で光を取り込みピントを合わせる
↓
網膜で光を感じ取る
↓
光の情報を電気信号に変換する
↓
視神経から脳へ伝える
↓
脳が映像として認識する
この一連の仕組みを構成するどこかの組織に異常が生じると、かすむ、ぼやける、ゆがむ、視野が欠けるなど、さまざまな見え方の変化につながることがあります。
旧記事でも、眼は小さな器官でありながら、ものを見るために多くの組織が細かく役割を分担していることが紹介されていました。眼の構造とそれぞれの役割を知っておくと、なぜ目の病気によって見え方が変化するのかも理解しやすくなります。
見え方に違和感がある場合は、「年齢のせい」「疲れているだけ」などと自己判断せず、眼科で検査を受けることが大切です。特に急激な視力低下や視野の異常、強い眼痛などがある場合は、早めに眼科を受診しましょう。
